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「綾子さん、嵯峨さんの持って来た新商品の広告モデル、人気雑誌モデルのエリカですよね!」  一人悦に浸っていたところ、若手秘書の咲良ちゃんに聞かれ、私は我に返り手に持っていた広告を見る。  今やCMやテレビにも引っ張りだこで、今秋には主演映画まで公開されるという超人気モデルである。  すらりとした手足に、モデルというだけあって身長は百七十三センチもあるそう。私と違いぱっちりとした二重の大きな瞳で、少し小悪魔な雰囲気のある、気の強そうな美人である。 「このモデル、社長のご子息の元カノって噂ですよ」  噂好きな咲良ちゃんの耳打ちに私は驚いた。この子の情報収集能力には毎度脱帽する。   「エリカって、実家が製鉄会社のお嬢様で、社長の息子さんと幼稚園から高校までずっと一緒だったみたい」 「なんか住む世界が違うわね」 「綾子さん、社長のご子息はお会いした事ないんですか?」 「ないない。名前くらいは勿論存じてるけど、社長と行動を共にするのは第一秘書の中川課長だから、私レベルがご家族にまではお会いしないわ」 「まあ、第一秘書でなければ、なかなかご家族までは会う機会はないですよねー」  雑談中にまたエレベーターが鳴り、扉が開いた。噂をすれば中から降りて来たのは、社長第一秘書で秘書課課長の中川雄二だった。 「おはよう。ミーティングを始めよう」
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