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あたし、紺野 アヤカは男を飼っている。
別段広くもない1Kのマンションで、忠実で可愛い犬ではなく人間の男を。
大学時代のサークル仲間から恋人になった、渡辺 宗太。
ワイワイみんなで一緒に過ごしてるうちになんとなく仲良くなって、流れでなんとなく付き合うようになって、いつの間にかもう五年。……いい加減極まりない。
二人とも今年で二十五だよ。時間が経つのって早いよねぇ。
あたしは新卒で入った会社にそのまま勤めてる。
このご時世にもそれなりに安定した業種で、収入も職場環境も恵まれてる方なんじゃないかな。上見たらキリないし。
学生時代、資格取得に苦労しただけのリターンは受けられてると思ってるよ。後輩もできたし、仕事もやり甲斐ある。少なくとも不満はないな。
あたしの部署は、世間の状況に照らして在宅勤務主体に切り替わった。
今後、在宅と出勤の割合はどう変わるかわからないけど、少なくとも以前みたいなオフィス主義の勤務状況には戻らない、と思う。
もう『在宅ありき・在宅メイン』に業務も意識もスライドしてるから。
宗太は生来のお気楽さも手伝って、就活もいい加減だった。どころかまともに就活してなかったんじゃないの?
案の定、滑り込んだ会社はブラックどころじゃないレベルだったらしくて三か月後には無職になってた。
その間はあたしも忙しくて構う暇なかったけど、向こうはそれこそこき使われて大変だったみたい。逃げられる前提でその前に使い潰そうとでも思ってんのかね、ああいうところって。
つーことで、卒業してから宗太が辞めるまではほとんど会ってなかったんだ。
たまに泣き言メッセージが来てた、かな。
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