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清海の体調は良くなるどころか悪くなる一方だ。
「どう? 清海、具合は?」
時子が横になる清海に声を掛けたが微かな返事だけだ。
「清海……清海……」
肩を揺らすがそのまま揺れるだけで力がない。慌てて時子は救急車を呼び掛かり付けの鐘ケ江産婦人科に清海を連れていく。清海はそのまま妊娠悪阻と判断され特に重症で緊急入院することになった。
「このままでは母子共に危ない」
担当の白石は覚悟を決めて夫、博之に話をしなければと思った。清海の様態は極めて最悪だ。食べ物を受け付けず嘔吐を繰り返したせいで胃液を吐く状態。脱水症状を起こし唇はカサカサになり、二十週目の妊婦にしてはあまりにも体重が軽すぎる。なんとか点滴で凌いでいる状態だ。
「先程ご主人が到着されました」
助産師の竹上由美子が白石に声を掛ける。
「すまん。急いでご主人を呼んでくれ。大事なことがあると伝えてくれ」
「分かりました」
竹上は清海の夫、博之を呼びに走りかけたが冷静になれと自分に言い聞かせゆっくり歩を進めた。
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