命なる言の葉

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「神崎さんをお連れしました」 「どうぞお座りください」  焦る表情の博之を落ち着かせるように白石は座るよう促した。 「先生、清海はどうなんですか? 大丈夫なんですか?」  白石はかぶりを振り神崎の目を見てゆっくり且つ冷静に話し始めた。 「率直に申し上げますが神崎さん。清海さんは非常に危険な状態です。現在の症状からしても次の段階に突入してもおかしくないのです」 「これよりもっと酷くなるって言うんですか?」  本人は冷静でいるつもりが声を荒げた博之。 「落ち着いてください、神崎さん。清海さんがもしこれ以上に回復出来ずにいればウェルニッケ脳症を引き起こすかもしれません。簡単に申しますと、脱水症状や栄養不足により脳に障害が起こり記憶障害や運動に異常をきたします。そしてもっと酷い場合はコルサコフ症候群といった記憶に関する後遺症を生じますし、これ以上進めば……」  白石は話をゆっくり続けているが、神崎の頭の中は混乱が生じている。 「これ以上?」 「そして最悪、胎児死亡や多臓器不全による母体死亡まで考えられます」 「二人とも死亡?」  博之は頭を抱える。 「ですから……真に申し上げにくいのですが、お腹の子を諦めることを選択肢に入れることもお考えください。このままでは清海さんが本当に危ないです」  冷静に話せば話すほど辛くなると白石は思った。しかし、今が山場なのだ。この選択が清海の命を左右する。隣にいる竹上も表情は崩さず冷静に博之を見つめていた。
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