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同窓会
柴田智己の自宅は集落から少々離れたところにあり昔からある古い一軒家だ。妻文子と二人の子供の四人家族である。
「行ってきます」
正月明け三日の日に二十歳になる息子雄二郎は今日地元の中学の同窓会ということで夕方から出掛けた。地元に住む雄二郎にとって地元を離れた同窓生と会えるのは楽しみで仕方なかったようだ。
「はめをはずしてあまり遅くならないようにね」
「分かってるよ」
笑顔で出ていく雄二郎。正月のご馳走の残り物で食事を済ませる三人。娘の明美は早々に食事を切り上げ自室に籠った。出掛ける予定もなくスマホでも弄り動画を閲覧したり友人と連絡でも取っているのだろう。子供が大きくなり手が掛からなくなることは喜ばしいことだが寂しいものだと文子は智己と二人残された居間でテレビを見ていた。
「二人きりだと寂しいものですね」
文子が悲しげに智己に話しかけた。
「仕方ない。あいつらもいい年だ。それに雄二郎は久しぶりに同級生と会うんだ。きっと今も楽しんでるんだろう」
「そうですね……いい同窓会なってくれればいいですね」
炬燵に入り文子が煎れたお茶を飲む二人。何気につけているテレビをぼんやり見ていた。夜も徐々に更けていく。外は寒さも厳しくなっている。古いこの家には今時、珍しく振り子時計、いわゆるボンボン時計がカチカチと音を立てている。昔からあるボンボン時計はまだ現役として時を知らせている。冬の寒さと時計のカチカチ音が余計に物悲しさを演出していた。
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