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静かな音
時計から時刻を知らせる前にジィィィと音がする。
ボーン……ボーン──ボーン
十二回音を鳴らし日付が変わったことを知らせた。
「雄二郎、遅いですわね」
「まだ盛り上がってるんだろう」
「そうよね。今時の子が早く帰って来ることもないでしょうし」
文子は席を立った。つられて智己も席を立つ。
「そろそろ寝ましょうか? 雄二郎もいい大人ですし……」
「そうだな」
二人はテレビを消して障子戸を開ける。冷気が温まった今に流れ込む。二人は冷たい冷気に晒されながら廊下を軋ませ寝室へ向かった。
「今夜はやけに冷え込むな」
「そうですね。路面が凍結していなければいいですけど」
二人は布団に潜り込む眠りについた。
その頃、タクシーは一人の男を下ろし、ユーターンして赤いテールライトを灯し走しり去った。男は帰るべき場所に足を向かわせた。この時、時刻は深夜一時頃を回っていた。
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