四角い箱

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 それから私は毎週土曜、小鳥堂で山型食パンのハーフを予約するようになった。  前嶋さんには会ったり会わなかったり。  会っても軽く言葉を交わす程度。  それでも嬉しかったし、会えなくてもレジの後ろにある予約用の棚に山型食パンのハーフが置かれているのを見つけて、「あ、今日はまだ寝てるのかな」とか考えるは何だか楽しかった。 「芹沢、午後のミーティングの資料頼むぞ」 「あ、はい」  係長のセリフに私は抑揚のない返事をしてみせる。  ウチの部署はミーティングがやたらと多い。  その殆どは形骸化していて、みんな無駄だと思いながらも惰性で参加している。  そしてその為の資料なんて誰も真面目に読んでなんていない。  資料中に『オッペケペーションによるステテコリティが』なんて文言を挿入したって誰も気が付かないんじゃないだろうか。  無駄なミーティングを減らせば、その資料を作っている私は毎日定時で帰れるんじゃないかと思うけど……。 「あ、今日は『ノー残業デー』だから早く仕事終わらせて帰るようにね」 「……はい」  形骸化した『ノー残業デー』。みんなその為にサービス早出したり、休憩時間返上でパソコンに向かったりしている。  午後のミーティングを止めればその分みんな早く帰れるって、上の人達は何でそんな簡単なことわからないんだろう……。
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