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小鳥堂の古い木製のドアを開けると、カランカランと軽快なベルの音が鳴る。
店内は既に満員状態だった。
とはいえ4畳半ほどのスペースに手作りパンが所狭しと並べられているので、お客さんが5人も入れば一杯なのだ。
一人お客さんが帰るのを待ってから私は店内に入る。
目指すのはいつもの棚。
今日は山型食パンが沢山並べられている。
そう、私は今日、早起きして開店直後の小鳥堂へやってきたのだ。
しかも今日は平日。久しぶりの有給だ。
主任はグチグチ言っていたけれど、どうせ私の作る資料なんて誰も見やしない。
私は山型食パンのハーフの袋をトレーに載せるとレジに向かう。
「あら、芹沢さん、いらっしゃい。珍しいですね」
いつもの穏やかな表情で小鳥堂の奥さんが出迎えてくれる。
「今日は有給なんです」
「あら、そうなのね」
奥さんは何だか意味ありげに小さく笑ってみせる。
「サンドイッチ用に薄くスライスってできますか?」
「もちろんよ。ちょっと待っててね」
彼女はもう一度ふふっと笑うと厨房へ消えていった。
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