12

1/1
前へ
/14ページ
次へ

12

タイル王国では、孤児は12歳から自分の戸籍を作れるが、基本的に16歳までは孤児院で暮らす必要がある。 特殊なスキル持ちとかで、1人でも生きていけると判断されたら、12歳から一人暮らしも可能だが。 レイ・ワールドは文字化けスキル持ちなので、身分証明証にしっかりと【スキル 文字化けスキル】と記されているのだ。 文字化けスキル持ちは、何もスキルが使えないスキル無しの無能だとされている。 なので、12歳になったばかりのレイ・ワールドも、本来なら孤児院へ入る必要があるのだ。 「クロ」 「ニャ?」 「俺は孤児院には入りたくない」 「にゃん?」 「しかし、どこかの店とかで住み込み丁稚奉公も嫌だ」 「そうにゃんね」 「優しくて金持ちの養子になるのも、さすがに文字化けスキルの俺では無理だろう」 「はあにゃん」 「子供が1人で宿に泊まるのは駄目だ」 「でしょうにゃん」 「野宿は嫌だ。俺は虫が嫌いだ」 「わがままにゃん」 「そこでだ」 「にゃん」 「クロが大人に化けて、俺はクロの息子だということにするしかない」 「はて、上手くいくにゃんか?」 「それしか俺が生きる道はない」 「う~ん、了解にゃん。虎穴に入らずんば猫も成長しないからにゃん」 「クロ、難しい言葉を知っているな」 「日本で生きてたころは、ゴロゴロしてテレビを良く観てたにゃん」 「家猫だったのか?」 「そうにゃん」 「どうして暴走トラックにひかれる状況になったんだ?」 「散歩してたにゃん。自由な猫だったにゃん」 「お前の自由行動で日本での俺は死んだんだが」 「それは申し訳ないにゃん」 「しかし」 「にゃん?」 「クロは青信号を守っていた」 「当たり前にゃん」 「悪いのは暴走トラックだ」 「そうにゃんね」 「しかし、クロも原因のひとつだ」 「ニャ……」 「だから俺を助けろ」 「それはもちろん猫の手を貸すにゃん。無料サービスにゃんこ」 「よし、とりあえず宿に入ってこれからの作戦会議をするか」 「えっと、にゃん」 「どうした、トイレか?」 「違うにゃん。私が人間に化けれる時間は1日に30分だけにゃんよ」 「お前な、そんな大事なことは早く言えよ」 「だから言ったにゃんこ」 「その1日30分は5分を6回とか分割できのか?」 「はいにゃん」 「なるほど。それは助かる」 「良かったにゃんこ」 「これから安い宿を探してそこへ泊まる」 「はいにゃん」 「クロは物陰で大人に化けて宿へ泊まる手続きをしてくれ、なるべく手早く」 「分かったにゃん。老若男女、どれにゃん?」 「俺の義理の母さん役をしてほしいから、30歳の普通の女性で頼む」 「普通ってどんなにゃん?」 「変な男にナンパされない程度の目立たない容姿だな。印象に残らないような」 「なるほど分かったにゃんよ」 「頼むぞ、変に凄いスタイルの良い美人にしなくて良いからな」 「分かったにゃんよ」 (こいつ、なんか変な事をやりそうなんだよな)と思うレイだった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加