7人が本棚に入れています
本棚に追加
1
僕は明日、とうとう12歳になる。12歳の誕生日、それは人生のうちで1番に重要な日かもしれない。
どうしてか? その日は神様や女神様からスキルを授かる日だから。
僕は男爵家の三男でジーク・ハンド
ハンド男爵家の三男だ。貴族の地位は下から「騎士爵」「準男爵」「男爵」と続く。
下から数えるほうが早い地位の男爵家だけど、それでも貴族家なのだ。三男でも普通の平民の長男より格は上のはず。
王都学園にも通わせてもらえるし、普通に卒業さえすれば、それなりの地位の仕事にもつけるだろうな。
ジーク・ハンドは3歳くらいから「神童」「神に選ばれし子供」とか言われる事が多かった。
だいたいの事が同い年の子供より、かなり上手くやれたのだ。
ジーク自身は自分の事をすごい天才とか自惚れることは無かったが、周囲の期待は大きいものだった。
ハンド男爵が朝の挨拶をした。
「みんな、おはよう。今日はジークにスキルが授与される日だ」
「おはようございます、お父様」
「うむ」
それぞれが朝の挨拶を終えた。
「それにしても楽しみだな」
「はい、お父様」
「楽しみね」
「はい、お母様」
「俺は魔法剣士だったけど、ジークは何だろうな」
「ジーザお兄様の魔法剣士、羨ましいです」
ジーザは17歳でハンド男爵家の長男だ。王都学園の5回生なのだが、ジークがスキル授与されるので休暇を取り王都からハンド男爵領に帰っている。
「俺は魔法盾士だったからな〜。俺もジーザ兄さんのスキルが羨ましいよ」
「ジーガ、お前の魔法盾士も素晴らしいスキルだぞ」
「ありがとうございます、お父様」
ジーガはハンド男爵家の次男だ。15歳で王都学園の3回生。
王都学園は13歳から入学なのだ。
「私は魔法陣士だから戦場では後方支援が主な仕事だ。最前線で国を護れるお前たちは私の誇りだぞ」
「お父様」
「お父様」
「僕も戦場の最前線で役に立つスキルなら良いけど、お父様の魔法陣士も格好いいと思ってます」
「そうかそうか、ジーク」
「はい、お父様」
魔法行使には基本的に魔法陣を描いた特殊な紙が必要なのだ。
稀に魔法陣不要で魔法行使できる超天才魔法使いもいるが、世界で10人くらいしかいないらしい。
朝食後、ハンド男爵家の家族総出で神殿へと向かう。
スキル授与の儀式は神殿で執り行われる。
ハンド男爵領にも神殿がある。
「神殿長、本日は宜しく頼みます」
「これはこれはハンド男爵様、こちらこそ宜しくお願いします」
「神殿長様、宜しくお願いします」
ジークは神殿長に深々とお辞儀をした。
「これはこれはジーク様、礼儀正しいことで。私のほうこそ宜しくお願いします」
スキル授与の儀式を執り行う用意は済んでいるので、さっそく執り行うことになった。
もう、頭も胸もドキドキのジークだ。
神殿長が神様と女神様に祈りの踊りや祈祷を始める。
「ウンダラダラカッパッパ〜トンダラレンレンダラダララ〜」
ジークにはまったく意味が分からないが、神様や女神様の使う言葉なのだろうか、とか思うジークだった。
最初のコメントを投稿しよう!