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スキル無しの無能と思われてハンド男爵家から廃嫡、勘当されたジーク・ハンドは新しい戸籍を役所で手に入れ、レイ・ワールドとなった。 レイは地球の日本という国で暴走トラックにひかれそうな黒猫を助けようとして、一緒に暴走トラックにはねられ異世界転生をしたのだ。 その黒猫もまた、レイと同じ惑星の同じ王国に異世界転生をしていた。 そして、同時に同じ日(転生してから12年後の誕生日)に日本から異世界転生したことを思い出したのだ。 その黒猫は異世界転生ボーナスとして、いくつかのチートスキルを保有している。 ・タイル王国語と共通語を話せる。 ・老若男女の人間に化けれる。 ・完全な身分証明証を偽造できる。 ・ちょっとだけ相手の思考を読める。 かなりのチートスキル猫ちゃんなのだ。 異世界転生降霊術スキルだけの俺よりチートだとレイは思った。 しかし、クロはレイに完全服従の使い魔みたいな存在らしい。 レイとクロをこの惑星に異世界転生させたらしい女神様が、そのように設定したようだ。 猫に頼るのも人間としてあれだが、12歳のレイからしたら背に腹は代えられない。 黒猫のクロを完全に使い倒し利用することに決めた。 「本当に困った時は猫の手も借りろ」 そんな格言もあった気がする。 そもそも、黒猫のクロが暴走トラックにひされそうになってなければ、レイは異世界転生せずに日本で平和に何十年も暮らしていたかもしれないのだから。 「クロ」 「はいにゃん」 「人間に化けても、語尾はニャ、にゃん、ニャーなのか?」 「もちろんですニャ」 「……クロがガテン系のおっさんに化けたとして、『これはどこへ運ぶにゃん?』とか言うのは……まあ、仕方ないな」 「仕方ないですニャンよ。私は猫なのですにゃん」 「そうだな、猫が人間と会話できるだけでも奇跡だ」 「ですにゃん」 「俺は金が少ない。クロは?」 「猫がお金なんて持ってると思いますにゃんか?」 「猫に小判だろ」 「猫には美味しいご飯ですニャ」 「上手いこと言うな」 「ありがとうございますニャ」 「俺の全財産は8万円くらいだ」 「猫にしたら多いですにゃん」 「人間としては微妙だ」 「まあ、動物病院に入院したら6万なんて足りないですにゃんけど」 「そうだな。おい、クロ」 「はいにゃん?」 「語尾が『にゃんか』『にゃんけど』とか言ってるぞ」 「にゃんですと? あ、ほんまにゃん」 「まあ、少しは人間らしくなったな」 「私、そのうちに本物の人間になるにゃんか?」 「100年くらい徳を積めばなるかもな」 「ほえ~、さすがはマスターは長生きですにゃんな」 「ん?」 「マスターが最低でも150年は生きてくれないと、私は100 年も徳を積めないし、人間になれても楽しめないにゃんよ」 「そうだな。長生きしないとな」 「ですにゃん」 (150年も生きる人間なんていないだろ)と思うレイだった。
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