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タイル王国では、孤児は12歳から自分の戸籍を作れるが、基本的に16歳までは孤児院で暮らす必要がある。
特殊なスキル持ちとかで、1人でも生きていけると判断されたら、12歳から一人暮らしも可能だが。
レイ・ワールドは文字化けスキル持ちなので、身分証明証にしっかりと【スキル 文字化けスキル】と記されているのだ。
文字化けスキル持ちは、何もスキルが使えないスキル無しの無能だとされている。
なので、12歳になったばかりのレイ・ワールドも、本来なら孤児院へ入る必要があるのだ。
「クロ」
「ニャ?」
「俺は孤児院には入りたくない」
「にゃん?」
「しかし、どこかの店とかで住み込み丁稚奉公も嫌だ」
「そうにゃんね」
「優しくて金持ちの養子になるのも、さすがに文字化けスキルの俺では無理だろう」
「はあにゃん」
「子供が1人で宿に泊まるのは駄目だ」
「でしょうにゃん」
「野宿は嫌だ。俺は虫が嫌いだ」
「わがままにゃん」
「そこでだ」
「にゃん」
「クロが大人に化けて、俺はクロの息子だということにするしかない」
「はて、上手くいくにゃんか?」
「それしか俺が生きる道はない」
「う~ん、了解にゃん。虎穴に入らずんば猫も成長しないからにゃん」
「クロ、難しい言葉を知っているな」
「日本で生きてたころは、ゴロゴロしてテレビを良く観てたにゃん」
「家猫だったのか?」
「そうにゃん」
「どうして暴走トラックにひかれる状況になったんだ?」
「散歩してたにゃん。自由な猫だったにゃん」
「お前の自由行動で日本での俺は死んだんだが」
「それは申し訳ないにゃん」
「しかし」
「にゃん?」
「クロは青信号を守っていた」
「当たり前にゃん」
「悪いのは暴走トラックだ」
「そうにゃんね」
「しかし、クロも原因のひとつだ」
「ニャ……」
「だから俺を助けろ」
「それはもちろん猫の手を貸すにゃん。無料サービスにゃんこ」
「よし、とりあえず宿に入ってこれからの作戦会議をするか」
「えっと、にゃん」
「どうした、トイレか?」
「違うにゃん。私が人間に化けれる時間は1日に30分だけにゃんよ」
「お前な、そんな大事なことは早く言えよ」
「だから言ったにゃんこ」
「その1日30分は5分を6回とか分割できのか?」
「はいにゃん」
「なるほど。それは助かる」
「良かったにゃんこ」
「これから安い宿を探してそこへ泊まる」
「はいにゃん」
「クロは物陰で大人に化けて宿へ泊まる手続きをしてくれ、なるべく手早く」
「分かったにゃん。老若男女、どれにゃん?」
「俺の義理の母さん役をしてほしいから、30歳の普通の女性で頼む」
「普通ってどんなにゃん?」
「変な男にナンパされない程度の目立たない容姿だな。印象に残らないような」
「なるほど分かったにゃんよ」
「頼むぞ、変に凄いスタイルの良い美人にしなくて良いからな」
「分かったにゃんよ」
(こいつ、なんか変な事をやりそうなんだよな)と思うレイだった。
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