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14
レイは宿の女将さんに晩ご飯を頼みに行った。
「あの、すみません」
「おや、どうかしたかい?」
「晩ご飯は要らないと言いましたが、やはりお願いします」
「外に食べに行かないのかい?」
「ちょっと、お母さんが思ったより疲れてたようで。部屋で食べたいと思いますが、いいですか?」
「良いよ。そんな人も多いからね、定食2人前、は……多いかね」
「多いですね。いちばん安い定食を大人1人分と、スープを1つで」
「それで足りるのかい?」
「はい。僕もお母さんも少食なんです」
「そうかい、そんな人も多いからね。夕方の鐘がなったら用意できるけど」
「鐘がなって少ししたら取りに来ます」
「あいよ」
レイは代金を払って部屋へ戻った。
「お帰りにゃん」
「いちばん安い定食1つとスープで700円だった」
「安いですにゃん」
「まあ、いちばん安い定食だからな。しかし、隣の部屋の声とかほとんど丸聞こえだな。もう少し気を使ってくれないもんかな。まあ、こんな安宿に泊まるような連中だし仕方ないか」
「マスターにゃん」
「ん?」
「壁を偽造して防音にできますにゃん」
「防音? そんなことできるのか? 俺の家じゃないのに」
「宿代は払ってるので、この部屋は明日の朝までマスターの物ですにゃん」
「そうなるのか?」
「なるにゃん」
「お前のスキル、本当に融通が効くよな」
「ありがとうにゃん」
「じゃあ、この部屋を防音にしてくれ」
「どれくらいのレベルにするニャ?」
「ニャ?」
「マスターのご予算に合わせて防音レベルを上げれますにゃん」
「……なら、中間レベルで頼む」
「了解にゃん」
隣の部屋の声や音がしなくなった。
「ほう、中間レベルでもなかなかの防音レベルだな」
「それほどでも、にゃん」
「……おい」
「にゃん? どうしたにゃん? マスター怖い顔ニャ」
「もしかして、お前のスキルを使うと俺の持ち金が自動的に減るって仕組みなのか?」
「もちのロン。女神様が自動引き落としにゃん」
「……」
「痛いにゃん! 痛いにゃん! 猫虐待にゃん!」
「そんな大切なことは早く言え!」
「ごめんにゃん!」
「いくら使った」
「えっと……にゃん?」
「……持ち金を確認する」
「はいにゃん」
「1万3000円減ってるな」
「減りましたにゃん」
「お前、化ける、偽造、思考を読む、そのたびに金がいるのか?」
「はいにゃん」
「……俺が許可しない限り思考を読むスキルは使うな」
「人の言葉を使うのは良いにゃん?」
「あ?」
「人の言葉を使うのに、1日3000円いりますにゃん」
「……お前、金食い猫だな」
「いや~困った猫ニャンね」
「……」
しょせん、異世界でも金が全てなのかと思うレイだった。
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