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日本から今の世界に異世界転生したことを理解したジーク。 日本で食べてた食事の味を思い出し、こちらの世界の料理が不味く感じてしまう。 基本的に薄味で調味料や食材も日本と違うものが多いのだ。 そこでジークは故人の日本人で超天才料理人の「料理の帝王」と呼ばれていた味吉料吉を降霊術で自らに憑依させ、美味しい定食を作ることにしたのだ。 ハンド男爵領にある役所近くの食堂屋さんで。 「女将さん」 「はいな」 「これから俺はスキルを使って料理人に変身します」 「へ?」 「見た目や言葉遣いがかなり変化すると思いますが、それは俺のスキルの効果作用なので慌てず騒がず見ててください」 「……よく分かんないけど、分かった」 「ありがとうございます」 ジークはステータスボードをオープンして、今更ながら自らの降霊術について調べた。 (ふんふん、なるほど。降霊させたい人物をステータスボードに書いて、料金をステータスボードに入れるのね。……料金? 基本料金1時間1万円相当額……  オプション等で料金は上がります? ふんふん、なるほど。こっちの世界に 持ってきてほしい物とか指定すれば、降霊させた故人が持ってきてくれるのか。それは助かる) ジークはステータスボードに備え付けのペンで、味吉料吉の名前と持ってきてほしい物をステータスボードへ記入した。 『ご利用ありがとうございます。ご利用料金は2万円相当額となります。 1時間を超えて延長する際は、1時間毎に1万円相当額を投入してください』 ジークはステータスボードに銀貨4枚を投入した。 ステータスボードが大きくなり、人間が出てきた。たくさんの荷物も持っている。   「まいど〜、味吉料吉です〜。ご指名おおきに〜」 「……よろしくお願いします。あの、本当に味吉さんですか?」 「どして?」 「30歳くらいに見えるので。享年90歳くらいですよね?」 「あー、90歳で料理はキツいさかいな。1番に料理の腕が良かった年齢で来たんよ。今から、あんさんに憑依しまっせ? よろしいか?」 「なるほど。よろしいで……あの」  「あの?」 「憑依されている間の俺の意識は消えたり……身体を乗っ取られたりしません?」 「がっはっは! 乗っ取りとかまさかですわ。見た目はわて、意識はあんさん」 「見た目は味吉さんで、意識は俺ですね?」 「そうやね」 「あの、それで俺が料理できます?」 「あ、大丈夫よん。勝手に身体が料理するさかいな」 「なるほど。分かりました」 味吉料吉はジークに憑依した。 見た目が味吉料吉そっくりに変化したジーク。 「ま……」 口をおさえて女将さんは驚いた。
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