1/1
前へ
/14ページ
次へ

役所で新しい身分証明証を受け取ったジーク・ハンドは、新しい名前がレイ・ワールドとなった。 (新しい身分証明証の発行に銀貨2枚。日本から味吉料吉さんの霊を呼んで銀貨4枚を使った。残り8万円か)   革袋の中の残りのお金は金貨1枚、銀貨6枚、銅貨10枚だ。 (お金を稼ぐ方法を見つけないと、早々に破産して孤児院に入らないといけないな) しかし、お金を稼ぐと言ってもレイは12歳。この王国の法律で15歳未満の子供はお金を稼いではいけないのだ。 (どんな凄い故人でも、俺の降霊術スキルは1時間1万円で呼べる。 その1時間で100万円くらい稼げる闇バイトをするしかないだろうな) そんな事を考えながら歩いていたら、黒猫が目の前に現れた。 「日本のこと、思い出しましたかニャ?」 「ニャ? あ、まあ……あれ? また俺は夢を見てるのか?」 (この世界にも地球の猫や犬にそっくりな動物はいるけど、人間と会話はできなかったよな? しかも、日本?とか言ってるし) 「お忘れかニャ? マスターが助けようとしてくれた黒猫ニャ」 「まさか、日本の……あの時の暴走トラック?」 「そうニャ」 「……黒猫さんも異世界転生したのか」 「そうみたいニャ」 「異世界転生ボーナスで話せる黒猫になった?」 「そうみたいニャ」 「……ちょっと物陰とかに行こう」 「ニャ!? 何をする気ニャ?」 「シー。静かに」 「ニャ?」 「通行人がじっと見てるから」 「大丈夫ニャ」 「え?」 「私の事が可愛いから、じっと見てるだけニャ。マスター以外の人間には『ニャー、ニャーン』とかしか聞こえてないニャ」 「そうなのか?」 「そうニャ。他の人から見たらマスターは可愛い黒猫と、猫語と人間語で道端で会話してる少年ニャ」 「……」 (なんか、それも嫌なんだが) 「ん? マスター?」 「ニャ、マスターは私のマスターにゃん」 「どうして?」 「どうしてもニャ」 「いや、今の俺には猫を養う財力なんてないぞ」 「心配無用ニャ」 「え?」 「私のチートスキルでマスターをサポートするニャ」 「俺をサポートできるような、そんなチートスキルがあるのか?」 「あるニャ」 (本当にか? あんまり道端で猫と長話もあれだな) すたすたと物陰へ歩くレイ。 とことこと後ろをついてくる黒猫。 「で、黒猫にはどんなチートスキルがあるんだ?」 「私のことは『クロ』って呼ぶにゃん」 「クロ……オスなのか?」 「マスター……聞いてくださいニャ」 「何を?」 「私も昨日、マスターとぶつかった瞬間に覚醒しましたニャ」 「あ……あの時」 「はいにゃん。で、私のタマタマはとっくの昔に手術で取られてしまってましたニャ」 「え?……うわっ」 「まさに、うわっ、ですにゃん……」 「……この世界でも猫を去勢とかするんだな」 「するようですにゃん」 「クロのタマタマさんにお悔やみ申し上げます」 「マスター、ありがとうにゃん」 タマは、いや、クロは頭を下げた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加