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役所で新しい身分証明証を受け取ったジーク・ハンドは、新しい名前がレイ・ワールドとなった。
(新しい身分証明証の発行に銀貨2枚。日本から味吉料吉さんの霊を呼んで銀貨4枚を使った。残り8万円か)
革袋の中の残りのお金は金貨1枚、銀貨6枚、銅貨10枚だ。
(お金を稼ぐ方法を見つけないと、早々に破産して孤児院に入らないといけないな)
しかし、お金を稼ぐと言ってもレイは12歳。この王国の法律で15歳未満の子供はお金を稼いではいけないのだ。
(どんな凄い故人でも、俺の降霊術スキルは1時間1万円で呼べる。
その1時間で100万円くらい稼げる闇バイトをするしかないだろうな)
そんな事を考えながら歩いていたら、黒猫が目の前に現れた。
「日本のこと、思い出しましたかニャ?」
「ニャ? あ、まあ……あれ? また俺は夢を見てるのか?」
(この世界にも地球の猫や犬にそっくりな動物はいるけど、人間と会話はできなかったよな? しかも、日本?とか言ってるし)
「お忘れかニャ? マスターが助けようとしてくれた黒猫ニャ」
「まさか、日本の……あの時の暴走トラック?」
「そうニャ」
「……黒猫さんも異世界転生したのか」
「そうみたいニャ」
「異世界転生ボーナスで話せる黒猫になった?」
「そうみたいニャ」
「……ちょっと物陰とかに行こう」
「ニャ!? 何をする気ニャ?」
「シー。静かに」
「ニャ?」
「通行人がじっと見てるから」
「大丈夫ニャ」
「え?」
「私の事が可愛いから、じっと見てるだけニャ。マスター以外の人間には『ニャー、ニャーン』とかしか聞こえてないニャ」
「そうなのか?」
「そうニャ。他の人から見たらマスターは可愛い黒猫と、猫語と人間語で道端で会話してる少年ニャ」
「……」
(なんか、それも嫌なんだが)
「ん? マスター?」
「ニャ、マスターは私のマスターにゃん」
「どうして?」
「どうしてもニャ」
「いや、今の俺には猫を養う財力なんてないぞ」
「心配無用ニャ」
「え?」
「私のチートスキルでマスターをサポートするニャ」
「俺をサポートできるような、そんなチートスキルがあるのか?」
「あるニャ」
(本当にか? あんまり道端で猫と長話もあれだな)
すたすたと物陰へ歩くレイ。
とことこと後ろをついてくる黒猫。
「で、黒猫にはどんなチートスキルがあるんだ?」
「私のことは『クロ』って呼ぶにゃん」
「クロ……オスなのか?」
「マスター……聞いてくださいニャ」
「何を?」
「私も昨日、マスターとぶつかった瞬間に覚醒しましたニャ」
「あ……あの時」
「はいにゃん。で、私のタマタマはとっくの昔に手術で取られてしまってましたニャ」
「え?……うわっ」
「まさに、うわっ、ですにゃん……」
「……この世界でも猫を去勢とかするんだな」
「するようですにゃん」
「クロのタマタマさんにお悔やみ申し上げます」
「マスター、ありがとうにゃん」
タマは、いや、クロは頭を下げた。
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