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「ただいまー。」
「パパ!!」
夜。
玄関のドアを開けると、パジャマ姿の藤太が現れたので、藤次は目を丸くする。
「なんや藤太〜。もう9時やぞ〜?夜更かしして、悪い子やなぁ〜。」
「だって…」
しゅんと俯き、モジモジする息子に首を傾げていると、絢音がやってくる。
「藤太、藤次さんとお風呂一緒に入りたかったんですって。ずっと眠いの我慢して待ってたのよ?だから、怒らないであげて?」
「藤太…」
「パパ…だっこ…」
そうして手を伸ばしてくるので、藤次は微笑みながら、絢音に鞄を渡して彼を抱き上げる。
「パパ…だいすき。」
「ほうかほうか、おおきに。お父ちゃんも、藤太が大好きやで。お風呂、一緒に入ろうな。」
「うん!」
「じゃあ、行きましょう。藤太、パパご飯食べるから、もう少し待てる?」
「うん!まってる!」
「ああ絢音、ええわ。先風呂入る。可愛い息子に、これ以上待たせたら申し訳ないしな。」
「そ。分かった。じゃあ、着替え用意するわね。」
「うん。おおきに。ほな藤太、行こうか。」
「うん!」
…そうして扉を閉めて、ワシは今日も、暖かい家族の待つ家へと入っていく。
今まで、ぎょうさん巡り合ってきたどの扉よりも、暖かくて幸せな、扉…
無くしとうない。
一生、守っていく。
ワシの大切な家族に続く、扉を…
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