再会

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「俺とたくさんイチャイチャしたの覚えてるなら、どうしてあの時逃げたりしたの?」 「そ、れは……」  たくさんイチャイチャしたからこそ、あの時は全部が居た堪れなかった。  自分から積極的に色々してしまった事も恥ずかしかったけれど、高槻さんは酔いが覚めた途端に他人の距離になってしまって、そのことが虚しかったのだと思う。  独り言のように吐かれた台詞を勘違いして、他の人と間違えたという意味だと思っていたし、酔っていたからこそ私としてくれた行為だと思ってしまった。  高槻さんが私に言ってくれた甘い言葉は全部その場のノリで、本気じゃないって分かっているのに頭から声が離れない。  あの触り方が記憶に残っている状態で優しくされたら本気で好きになってしまいそうで、それが怖くて逃げるという選択をしてしまった。  一晩だけの軽い繋がりだと割り切れる状態で去らないと、一生引きずりそうなくらいに幸せで気持ち良かったのだ。  なんて、そんな重たい事を言っていいのか分からず、口を噤んでしまう。
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