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「そっか、本当に覚えてるんだ。それなのにどうして逃げたの?」
「へ……」
「付き合う前に手を出す形になっちゃったし、起きて直ぐは順番間違えたと思って本気で焦ったけど、ちゃんと思い返したら悪い反応されてなかったんだよね。いっぱい甘えて君からも触ってくれたし、それなりに俺のこと気に入ってくれてるのかなって思ってたんだよ」
気に入ってくれてるも何も、高槻さんに迫られて悪い気になる人なんてほとんどいないと思う。
完全に同意のもとでの行為だから責任とって付き合うなんて考えなくてもいいのに、まるで付き合う事が自然のような発言を高槻さんは繰り返す。
「直ぐに付き合えたら勿論嬉しいけど、俺のことをちゃんと知ってくれるまでは少しずつ仲良くなっていけたらいいと思ってたんだよ。まさかそのまま逃げられて、連絡さえ返してくれないなんて思ってなかったから」
「は……」
「記憶とんで、酔って無理矢理手を出されたって誤解してるのかと思った。違うんだね」
たとえそうだったとしても、高槻さんを悪者にする気にはならなかっただろう。
違うんだねの言葉に同意するために何度も首を縦に振ると、高槻さんの表情が少しだけ冷たいものに変わる。
笑いながら話しかけてくれているのに、目の奥が全然笑っていない。
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