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* 【一週間後】  それは、僕がいつものようにメイド喫茶に帰る最中のことだった。黒ずくめの私服をした女性が、コワモテの男2人に囲まれている。 (あれは......萌きゅん?)  出勤前だったのだろう。メイド服は着ていないが、僕はチェキで彼女の顔をよく覚えている。ハニカムような笑顔が、今は小刻みに震えて涙目になっていた。男は萌きゅんに濡れたTシャツを見せつける。 「おいねーちゃん、クリーニング代どうしてくれんだよ」 「ぶつかられちゃったせいで肩の骨折れちまったわぁ〜」 (なんて古典的な!)  僕はメイドさんを愛する者として、一瞬たりとも躊躇わなかった。 「彼女に何か用か?」 「あぁ? なんだお前?」 「スッこんでろ!」  男達が吠える。僕は萌きゅんを自分の背中に隠して男達の前に立ち塞がった。男は僕とキスでも出来そうなくらいに顔を近づける。 「んーー? そのダサい丸眼鏡、マッシュルームカット。おいおいニーちゃん、よくこの辺りで噂になってるオタクくんじゃないのかぁ?」 「あ〜、噂なってたな! 毎日メイドカフェに行ってる奴! オタクの癖に金持ってんのか!?」  僕は怯みもせずに淡々と返す。 「家族の元に帰っているだけだ」 「ぴゃーー! 家族! メイドさんが家族だってよ!」 「確かに”おかえりなさいませ”って言ってくれるもんなぁ!」  男達は腹を抱えて笑い出す。その隙に僕は萌きゅんに声をかけた。 「お店に行って111番をしなさい」 「え? あ、はい! ただいま!」  萌きゅんは走り出す。僕は男達と再び対峙した。 「おい、聞いたか? 110番じゃなくて111番だってよ!」 「オタクくんは警察も呼べないんですかぁ〜?」 「良いんだよ、これで」
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