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深雪は、純粋な心の持ち主だったが、考えが単純で子供のようなところがあった。
一方、京平は年齢のわりに落ち着いていて、無口だった。
一見共通点のない二人だが、強く惹かれ合っていった。
「それじゃ、行ってくる」
京平は毎朝深雪の唇に軽いキスをして出かけようとする。
深雪は大学院の講義をサボることが多かったが、京平は決まって毎朝大学の図書館で調べ物をするため早めに出かけていた。
「行かないで、京平!」
深雪は京平の背後から抱きついて引き留めようとする。
これは毎朝のことだった。
「深雪…」
「やだ…やだ…今日は一緒にいて!」
深雪は京平のいない時間がとても退屈でそれが苦痛で仕方なかった。
京平以外のことは何も楽しく感じなくなっていた。
京平が留守のときは決まって、深雪は自室にこもり自慰行為をすることが増えてしまった。
「今日は早めに終わるから、一緒にお昼でもしよ」
京平は深雪を説得したが、彼女は涙を浮かべ震えていた。
「ねえ、行かないで!」
京平は毎朝こうして引き留められるが、深雪がその際に泣いたのは初めてだった。
「なんだよ…。泣かなくてもいいだろ?」
京平は呆れてそう言うと、深雪の涙を指先で拭いて離れていった。
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