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引き離そうと腕を掴んでやってもビクともしなくて、必死にもがけばやっと手が離された。瑞希は呆れたように歩き出したが、ついて行っていいか分からずその服の裾を握りながら場に立ち尽くしてしまう。
余のやる事は間違ってない。余は余なのに何故それがいけない?好きでこんな世界にいる訳じゃ…無い…反対側へ走り出し、路地裏から抜けても走れば大きな音が聞こえそちらを見れば鉄の箱が迫ってきていた。
ぶつかると思った瞬間背後に引かれ、ぶつからずに済んだし地面に落ちるかと思ったがクッションがあるのかそこまで痛みは無かった。
周りがザワつく中クッションから退いて見ればそれは瑞希で倒れていたが、何とか起き上がり余を見上げて無事な事に安堵している様子だった。
「馬鹿野郎死にてぇのか!!」
鉄の箱から男が降りてきて、瑞希は立ち上がり頭を下げていて余はそんな瑞希を見て、生まれて初めて頭を下げた。
男はまた鉄の箱に乗り込みどこかへ行ってしまい、それを見ていればまた腕を掴まれ引っ張られる。次は優しく掴まれていて、瑞希の家へと帰ったかと思えば扉を入ってすぐ痛い程抱きしめられた。
「み…みず」
「怒ってごめん…僕が悪かった。無事で…良かった」
「余…お、俺の方こそ…すまなかった」
瑞希の声が震えている…ゆっくり背中に手を回せば抱きしめられる手に力がさらに込められてゆき、手放さないという意志を感じられた。
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