暴君はオメガバースの世界に転生しました

8/98
前へ
/98ページ
次へ
腕で目元を拭いながら起き上がり、足を組みながらまた時折指で目元を拭う。余は泣いてなどいない。断じて泣いてなどいない!父様から泣いていい時など無いと教わってきた余が、あんな事如きで泣くはずないではないか。 しばらく待っていればいい香りがしてきて、空腹だった事を思い出す。いつの間にか薄い箱は真っ黒になっていて、静寂がこの部屋を包んでいた。 いつも誰かが側にいて、いや誰かとは主に女がいて好きな時に乳房を揉んだりキスをして過ごしていたのに…こんな一人なんて… 「お待たせ」 目の前に置かれたのは盛り上がった色つきの米で、スプーンも置かれていてそれを手に取り米を口へ運ぶ。御馳走ではないけれど、不味くもないと思う。 「美味しい?」 「まぁシェフの料理と比べたらそうでも無いな」 「そう」 余が食べているのを黙ってそばに居ながら待ってくれている。茶色い水がありそれを見つめていたが、米を食べていて喉が乾きそれを飲んでみればほのかに芳ばしい水だった。 「芳ばしい水だな」 「麦茶っていうお茶だよ」 むぎちゃ…?紅茶なら知ってるぞ?麦茶ってなんだ?紅茶の仲間か?とりあえず完食をして麦茶とやらも飲み干して、なかなか満足だったと思う。
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

66人が本棚に入れています
本棚に追加