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「翔子さん! お弁当、忘れないで下さい! 翔子さんの大好きなタコさんウィンナー作ったんだから!」
圭は、寝坊をして朝食も取らずに、寝癖のついた髪を必死で直しながら玄関へ向かう翔子に、そう言って、作った弁当を渡そうとした。
「渋谷君! 嬉しいけど、それどころじゃないのよ! 今日はアメリカのハミルトン大統領が来日するから空港まで迎えに行かなきゃならないの! 遅れるわけには行かないわ!」
椿翔子は、日本で初の女性総理大臣である。
そして、42才という若さで美人でもある。
その夫となったのが、椿総理大臣の元SPだった渋谷圭だ。
もちろん、背の高い逞しいイケメンである。
圭は、翔子の総理大臣としての仕事を支えるため、SPの仕事を辞めて、専業主夫になったのだ。
周りは驚いたが、圭にしてみれば、総理大臣である翔子と結婚するためには当然のことだと思った。
そんな二人の新婚生活は、やはり忙しなかった。
「翔子さん、急ぐなら、僕がナナハンのバイクで空港まで送りましょうか? SPの車で行くより早いですよ」
「渋谷君、それはいい考えだけど、ハミルトン大統領がびっくりするわ」
「ハミルトン大統領も女性だから、分かってくれますよ。だけど、その渋谷君っていつまでも呼ぶのはやめて下さい。僕は貴女の夫なんだから」
翔子は、アッと思い出した。
「渋谷君! そういえば、あなたも来なきゃ! 夫婦で出迎えるのが通例よ!」
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