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圭は、翌日の朝、何事もなかったかのように普段通り朝食の準備をした。
レタス、ハム、トマト、卵サラダを挟んだトーストと、いわば昨日命懸けで翔子のために買ったコーヒーだ。
あの大型トラック事件の後、圭はそのままコンビニに行き、コーヒーを買ったのだった。
たかが自分の命を狙われたくらいで、怖気付くようでは、元総理大臣付のSPの名が廃る。
圭が所属していたSPは、警視庁警備部警護課の中でも一番重要人物である総理大臣を警護する第一警護のエリートである。
警視庁の一番優秀な人材と言っても過言ではない。
圭は、自分が元そのSPであることに誇りを持っていた。
翔子が、いつものように朝早く五時には起きて来た。
リビングのテーブルには、もう完璧な朝食が準備してある。
「渋谷君、おはよう。いつもありがとうね」
翔子は、圭に感謝の言葉を掛けた。
「いえいえ、愛する奥様のためですから」
圭は、笑って答えた。
昨日の夜のことは、悟られてはいけない。
ただ心配させるだけだ。
翔子には総理大臣としての重責があるのだ。
余分な心配を掛けてはならない。
圭は、普段の愛する妻としての翔子だけでなく、総理大臣としての翔子を支えるためにも、結婚を決意したのだ。
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