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【ミステリーBL】5話(3)【1分あらすじ動画あり】
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↓現在、以下の2つのお話が連載中です。↓
週末に動画のビュー数を見て、
増加数の多い方の作品をメインに更新したいと思いますmm
◆『不惑の森』(本作品:ミステリーBL)
https://youtube.com/shorts/uVqBID0eGdU
◆『ハッピー・ホーンテッド・マンション』(死神×人間BL)
https://youtube.com/shorts/GBWun-Q9xOs
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にっこりと差し出された皿を、直樹は戸惑いながら見た。
「直樹が、好きだった……?」
「おや、ナオ。覚えていないかい? 君はウチに来る度にこれをねだっていたじゃないか? まぁ、かなり昔の話だから覚えていなくても仕方ないかもね」
「すみません…俺、この村にいた時のこと、あんまり良く覚えていなくて……」
申し訳なさそうに言った直樹に〝神父様〟は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐににっこりと寛容な笑みを浮かべた。
「そうか。でもそれは仕方がないことかもしれないね。この村は君にとって良い事ばかりだけではなかった。あんなことがあったんだから当然だ。忘れてしまった方が良いこともある。なら今は、新しい思い出の方を作るとしようじゃないか。まずはその一歩としてこれを一口食べてみておくれ」
〝神父様〟が手でパンケーキを、ずずいと前に出す。皿を受け取った直樹は、それを一口ほおばった。
「……おいしい」
「そうだろう、そうだろう」
もくもくと食べる直樹を見て〝神父様〟はうんうんと満足そうな笑みを浮かべた。途端直樹は、自分の中に懐かしい思い出が甦ってくるのを感じた。
この村で自分は朝から晩まで、兄である春樹の後ろをついて回った。それを見た周りの人たちは、自分のことを「お兄ちゃんの背中にいなければ何も出来ない甘えん坊さん」だと笑った。
直樹は誰に何を言われても平気だった。兄さえいてくれれば何にもいらなかった。だから当然〝神父様〟の家に兄が本を借りに来る時も、直樹はそれについて行った。
〝神父様〟はそれを快く迎えいれてくれた。
彼の家の書庫には村にはない珍しいものがたくさんあり、直樹は兄と一緒に通っているうちに膨大な蔵書よりも、そちらの方に夢中になった。大きな望遠鏡や色とりどりの鉱物。七色に光る蝶の標本。〝神父様〟はそれら一つ一つを宝物のように手にとって説明してくれた。直樹は彼のことがすぐに好きになった。
一方の兄はその横で〝神父様〟の蘊蓄話に耳を傾けながらも静かに本を物色していた。
まるで一枚の絵のような光景。
直樹は昔読んだおとぎ話を思い出す時のような懐かしさが込みあげてきて、思わず涙ぐみそうになった。
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9/30(Mon)
閲覧いただき、ありがとうございます。
『不惑の森』の動画ビュー増加数の方が2ビュー多かったので、
今週はこちらを更新させていただきます。
動画を見てくださった方、ありがとうございます!
また、「郁嵐(いくらん)」名義で
ブロマンス風のゆるい歴史ファンタジー小説も書いています。
新連載を始めましたので、気軽におこしくださいませ~
◆あらすじ動画
https://youtu.be/JhmJvv-Z5jI
※本編情報は概要欄にございます。
良い週をお過ごしください!
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