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【神隠しミステリーBL】6話(1)【1分あらすじ動画あり】
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↓現在、以下の2つのお話が連載中です。↓
週末に動画のビュー数を見て、
増加数の多い方の作品をメインに更新したいと思いますmm
◆『不惑の森』(神隠しミステリーBL)
https://youtube.com/shorts/uVqBID0eGdU
◆『ハッピー・ホーンテッド・マンション』(死神×人間BL)
https://youtube.com/shorts/GBWun-Q9xOs
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「もしかして、俺をけしかけた?」
運転を代わった直樹は、助手席にいる浩美を横目見た。
そもそも事の起こりは今朝、突然コテージに現れた彼が寝不足でぼうっとしている直樹を「懐かしい人に会いに行く」と言って無理矢理車に押し込んだこと。そして連れて行かれた先は、昔よく通っていた〝神父様〟の家だった。
浩美がそんなことをした理由は、何となくわかっていた。
「浩美は……俺を試そうとしてたんでしょ? 俺が春樹か直樹か〝神父様〟に判断してもらおうと思った? それとも〝神父様〟に会った時の俺の反応を観察していた? どちらにせよ、嫌らしいやり方だよね」
「直、俺は――」
言い淀む浩美を遮って、直樹が口を開いた。
「浩美はまだ俺が直樹だって信じられない? そんなに春樹の方に帰ってきて欲しかった?」
「そ、それは――」
縺れるように口を噤んだ彼に直樹はため息をついた。
「――いいよ。俺、浩美の好きな方になってあげるよ。俺たち兄弟は互いの物真似が得意だったから、浩美が春樹の方がいいって言うなら――」
「お前、何言ってんだ」
突然、浩美の声に険しさが混じった。
「それを言うなら、お前の方はどうなんだよ? さっき〝神父様〟に言ってたよな。ここでの記憶があまりないって。それは本当なのか? もしそれが本当なら、お前が直樹だっていう根拠がますます疑わしくなる。そうだろう? お前はそれを指摘されると思って、今まで俺に黙っていたんじゃないのか? 直樹のふりをして、俺を騙して……」
「それは言い掛かりだよ。俺はここでの記憶、全部を忘れた訳じゃない。所々はちゃんと覚えてる」
「でもその記憶だって一体、どっちのもんかはわからないだろう? なんせお前らはいつも一緒に行動して、同じものを見て、同じものを聞いて、同じ記憶を共有してきた。だから直樹のことがわかるからといって、それが本当に直樹であるとは限らない。――……なぁ、本当にお前はどっちなんだよっ……!」
浩美は両手で頭を抱え、かすれた声を出した。その垂れた頭を直樹は見つめる。
「〝神父様〟の見立てはどうだったの?」
「…〝神父様〟は、お前が直樹だとすっかり信じていたよ。あの人は、お前の言うことなら疑ったりしないからな。……っておい、どこに行くんだ? コテージは過ぎたぞ」
窓の外を見た浩美は車が村を出、林道にまで至るのを不審に思い、問い詰めた。それでも車は止まらない。焦った彼は慌てて運転手の腕を掴む。だが相手は動じることなく、颯爽とハンドルを切り続けた。
「一体、どこへ行くつもりなんだ?」
苛立ちながら再度聞くと、直樹は視線を前方に向けたまま「森だよ」と小さく答えた。
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