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【ミステリーBL】4話(1)【1分あらすじ動画あり】
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↓現在、以下の2つのお話が連載中です。↓
週末に動画のビュー数を見て、
増加数の多い方の作品をメインに更新したいと思いますmm
◆『不惑の森』(本作品:ミステリーBL)
https://youtube.com/shorts/uVqBID0eGdU
◆『ハッピー・ホーンテッド・マンション』(死神×人間BL)
https://youtube.com/shorts/GBWun-Q9xOs
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夢を見る。いつもの夢だ。
ひたすらに走っている――森の中を。
森は暗い。寒い。深い。そして寂しい。
そこに、一人。
必死になって走っていた。
視界の端にフッと白いものがよぎる。背中だ。白いシャツを着た華奢な背中が前方の木々の間を、まるで風のようにすり抜けてゆく。
――あれは……。
「兄貴?」
呼びかけに影が、ふっと振り返った。だが、すぐにまた走り出してしまう。
「待ってっ! 兄貴っ! 」
急いであとを追った。間違いなかった。ちらりと見えた顔はあの時と変わらない、白い容貌。
「兄貴っ! 兄貴っ !」
直樹は前方を行く影から一時も目を離さず走った。
白い影は、まるで冬の木洩れ日のように鈍くぼんやりとしていて、一向に近づくことが出来ない。「くそっ」と走る足に力をこめた。
その瞬間、後ろから誰かの声が聞こえてきた。
「兄貴っ! 待ってっ!」
――え?
思わず振り返る。すると後方の木立の間をもう一人の子供がかいくぐりながら、こちらに向かってくるのが見えた。
「兄貴っ! 置いていかないでっ!」
子供は叫んだ。その顔は今にも泣き出しそうに歪んでいる。
なぜだか見覚えのある子供だった。
自分はその子を知っている。
当たり前だ。
なぜならその子は――
「直樹?」
言ってしまってから、すぐに首を振る。
違う。そんなことあるはずない。
直樹は俺だ。
しかし追ってくる子供の顔はどう見ても、小さい頃の自分にそっくりだった。兄を失ってしまったあの頃の自分に。
直樹は不安に駆られて辺りを見回した。だが先ほどまで追っていた白い影は、どこにも見当たらなかった。
「兄貴っ!? どこだ!?」
振り切るようにして再び走り出した。その後ろから「兄貴、行かないでっ!」と子供の声が響く。
その声が不安を駆り立てる。
本当は彼が、直樹なのか?
でも、だとしたら俺は……
俺は一体、誰なんだ?
ふっとある考えが頭をよぎった。
もしかして俺は――
風が吹き、自分の着ている上着の裾がはためいた。シャツの白色が目の端を掠める。
瞬間、思い至った。
――もしかして俺が、春樹なのか?
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