【ミステリーBL】5話(1)【1分あらすじ動画あり】

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【ミステリーBL】5話(1)【1分あらすじ動画あり】

「ヤァヤァヤァッ! よく来たね! もっと顔を見せておくれ。抱きしめさせておくれ!」 〝神父様〟は大きな体全部を使うようにしてハグすると、相手の両頬にキスを送った。直樹も照れながらそれを返す。昔から何度も交わされた友人の証を。 「〝神父様〟ご無沙汰していました」 直樹が軽く頭を下げると、相手はわずかに涙ぐみながら、こくこくと頷いた。 「あぁ。本当だね、本当だよ。君たちがいなくなってから、どれだけこの村が寂しくなったと思っているんだい? でもまぁ、こうして帰ってきてくれたことに感謝するとしようじゃないか! よく来てくれた、ナオ。君のことはヒロミから少し話は聞いているよ。外で色々と大変なこともあっただろう。よく頑張ったね」 〝神父様〟は慰めるように直樹の頬を撫でた。 この人はいつだってそうだ。直樹は小さく身じろぎする。 彼の大仰なスキンシップは日本人の自分にとって、いつまで経っても慣れない気恥ずかしいものであった。 村の住人である〝神父様〟はドイツから来た宣教師だ。ただしそこには〝元〟がつく。彼は以前、神戸の教会に勤めていたらしいが、老年にさしかかると同時に隠居を考え、この村にやってきた。 ゆえに彼はもう「神父様」ではないのだが、フォン何とか何とかという彼の本名を村の老人たちは覚えきれず、もっぱら〝神父様〟と呼んでいる。本人もそれを直したりする様子がないため、今では村人全員がそれに習っていた。 「ナオ、しばらく見ないうちに綺麗になったね」 直樹の頬を大きな手で包みながら〝神父様〟は零れんばかりの笑顔を向けた。その口調はスキンシップ同様、過度なくらい甘いものであったが、彼はそれを無邪気な子供のように言うものだから始末が悪い。 「あの〝神父様〟……今のは普通、女の子に言うセリフですよ。日本では、」 「はは。何を言っているんだい、ナオ。性別や国なんて関係ないよ。君たちはこの村全員の孫みたいなものなんだ。そんな孫が久しぶりに帰ってきて、見違えるほど綺麗になっていれば、言わずにはいられないのが普通だよ」 ギュッと〝神父様〟が抱きしめてきた。 これじゃまるでクマに襲われた人間みたいだな。傍観していた浩美が忍ぶように笑った。するとそれを目ざとく見つけた〝神父様〟は太い腕を川鮭をとる勢いで浩美の肩に回すと、二人を一遍に抱きこめた。 「ナオ、ヒロミ。君たちは村の宝物だよ。みんな君たちのことを見守っている」 名残惜しそうに二人を離した〝神父様〟は、先ほどとは打って変わって意気消沈した様子で言った。 「だからハルが、あんなことになってしまったのは残念だ。君の片割れの兄弟はまだ見つからないんだろう?」 ○●----------------------------------------------------●○ 9/30(Mon) 閲覧いただき、ありがとうございます。 『不惑の森』の動画ビュー増加数の方が2ビュー多かったので、 今週はこちらを更新させていただきます。 動画を見てくださった方、ありがとうございます! また、「郁嵐(いくらん)」名義で ブロマンス風のゆるい歴史ファンタジー小説も書いています。 新連載を始めましたので、気軽におこしくださいませ~ ◆あらすじ動画 https://youtu.be/JhmJvv-Z5jI ※本編情報は概要欄にございます。 良い週をお過ごしください! ○●----------------------------------------------------●○
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