【あらすじ動画あり】1話

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【あらすじ動画あり】1話

○●----------------------------------------------------●○ ↓現在、以下の2つのお話が連載中です。↓ 週末に動画のビュー数を見て、 増加数の多い方の作品をメインに更新したいと思いますmm ◆『不惑の森』(本作品:ミステリーBL) https://youtube.com/shorts/uVqBID0eGdU ◆『ハッピー・ホーンテッド・マンション』(死神×人間BL) https://youtube.com/shorts/GBWun-Q9xOs ○●----------------------------------------------------●○ 「そこのお兄さん、乗っていかない?」 故郷の村へと続く林道を歩いていると、横を通り過ぎていったはずの車がバックして戻ってきた。 メタリックなカマキリ色。奇抜で趣味の悪い色の車から顔を出したのは、見覚えのある男だった。 「――浩美(ひろみ)ちゃん」 「おい。いい加減、その呼び方やめれ」 ガクッとずっこける真似をした西原(にしはら)浩美(ひろみ)は気を取り直すと、かけてたサングラスを下におろし「で、どうする?」と聞いてくる。その仕草はまるで洋画の中の俳優のようで、華やかな容貌を持つ彼には大層お似合いだった。 「さて、お客さん、どちらまで?」 お言葉に甘えて車に乗り込んだ途端、浩美がからかうように聞いてきた。どうせ行先など一緒のくせに。 「M村まで」 「あいよ。安くしとくよー」 おどけて言う。その口調は会っていなかった十年間のことなど、まるで感じさせないくらい気さくなものだった。 変わってないな、と微笑む。 西原浩美という人間はそのワイルドな見た目に反して人なつっこい、開放的な男だった。そのためか彼の周りにはいつも自然と人が集まってくる。 その社交性がたとえ幼少の頃から村と都心とを行き来する彼の複雑な環境が生み出した処世術であったとしても、それで彼の魅力が嘘になるということはなかった。 しかし若干的を外したような派手好みや、口から先に生まれたのではないかと思うほどのおしゃべり癖は、ちょっといき過ぎでは、と思うこともあるにはある。 言ってしまえば西原浩美という男は、黙っていればカッコいいが、今一歩のところで残念な男、なのである。 「にしてもホント久しぶりだな。十年ぶりくらいか?」運転席の浩美が聞いてきた。 「まぁ、そのくらい、かな?」 答えるのと同じタイミングで車が発進した。すると、彼お得意の口もなめらかに滑走してゆく。 「そっか。でもそれなのに、いきなりどうしたんだ? 今まで全然戻ってこなかったくせに。そんなんだからさっきお前の姿をそこで見たときは、てっきり幽霊かなんかかと思ったぜ。ホラ、ここって心霊スポットとしても有名じゃん? 普段誰も使わない森の中の道だし。この前もさ、肝試しにきた観光客がこの森で白い服を着た子供のお化けを見たって言うんだぜ。それでお前も白いの着てるから、てっきり『ついにっ!』とか思っちゃった訳よ。でもよく見れば十年前、村に住んでた高谷だし。もうびっくりさせんなよ。――それよりお前、今まで何してたの?」 ポンポンと切り替わる話についていくのがやっとで、しどろもどろになってしまう。 「何って、別にたいしたことしてないけど…」 「ほう。それは所謂ニートという奴ですか? 確かお前今…二十――あれ? 何歳だっけ?」 悪びれた様子もなく浩美が首を傾げた。 「二十――三だよ。そんなことより浩美、お前の方はどうしてるんだよ? こんな平日にプラプラして。人のこと言えないんじゃないの?」 からかうように相手の顔を覗き込むと、彼はにやりと笑った。 「そりゃ聞き捨てならんお言葉ですな。まぁ、期待を裏切って申し訳ないが、こうしていても俺はな、親父の秘書ということで一応やってるの。今だって親父を村に迎えにいくところだし。だからお前とは違うもん」 「もんって子供かよ。俺よりも三つ年上のくせに。さすが市議会議員の二世様は違いますね。お気楽なこって」 嫌味たっぷりに言うが、浩美は怒るどころか楽しげな声を上げて笑い出した。 ちなみに彼の「浩美」という名は、M村の長であった彼の祖父と市議会議員である彼の父親とが協議した結果決められた。 彼らがあえて息子の名を女名にしたのは、浩美が将来、選挙にでた際にインパクトのある名前の方が有利であろうと目論んだためだ。つまり彼らの頭の中では、子供が生まれる遥か前から、その子の未来の選挙ポスターだけはきっちりと出来上がっていたということだ。いつ聞いてもゾッとする話である。 そんないわく付の名を持つ男は選挙ポスターというよりもメンズ雑誌にでも採用されそうなニクイ笑顔を浮かべながら言った。 「でもなんか『二世』って面と向かって言われるのも久しぶりだな。昔は直樹にあんなに言われてたのに……」 信号待ちで車が停止する。車内に沈黙がおりた。 「なぁ」浩美が、おもむろに口を開いた。「お前がここに来たのって、今日があの日だからか?」 そう言うと彼はハンドルに肘をおき、窺うようにしてこちらを覗き込んでくる。 「俺はいつもこの日になると村へ帰ることにしているんだ。昔この森であんなことがあってから、ずっと。だからなんとなく、お前が今日帰ってきたのもそうゆう理由なんじゃないのかなって思った」 一人で納得したように言う浩美に直樹は口を挟んだ。 「ちょっと待てよ、浩美。勝手に話を作るなよ。俺が今日ここに来たのはただの偶然だ。それにお前が言っているあの日って――……」 口ごもった相手に浩美は詰(なじ)るような視線を向ける。 「お前、何言ってるんだよ? あの日って言ったら一つしかないだろう? お前たち兄弟が村から消えた日以外」 途端、勢いよく車が発進した。運転手は前方をきつく見据えながら言う。 「十年前、お前たちは村からいなくなった。兄の春樹は森に入ったまま姿を消し、残った弟の直樹の方もその一年後、家族とともに行方をくらました。以来どちらとも音信不通。そしてお前は――」 浩美はちらりと探るような視線で相手を見た。 「お前はどっちの方だ? 兄の春樹か? 弟の直樹か? 一体どっちなんだ?」
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