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近藤房江は泡沢の尋問にあっさりと落ちた。 最初は必死にごまかそうとしていたが、 悲鳴の実験結果を告げると項垂れ押し黙ってしまった。それを見たチッチが告げた。 「近藤房江さん。先輩が貴女の家の前に立った瞬間、あっという間にパンツにテントが張ったんです。つまり先輩はフル勃起したんですよ。これって捜査する上でこれ以上ない確定演出なんです。私は先輩のバディになってまだ日は浅いですが、ここまでの勃起は見た事がありません。今も先輩は勃起し続けていますから、がまん汁だって大量に出ている筈です。そんな状態の先輩を長い間、見ているのも、ほったらかしにするのも私は我慢ならないのです。ですが近藤さん、貴女は意外と早く自白をなさった。いえ、まだハッキリとは言っていませんが、先輩のフル勃起がそうだと言っています。なのでもう逃げられはしません。自白して終わりにしましょう。でなければ、フル勃起したままの、童貞の先輩が可哀想だと思いませんか?思いますよね?私は貴女を逮捕して、この場で先輩の童貞を力づくで奪ってやりたいのです。なので改めて尋ねますが、池田ミサヨさんを殺害したのは、近藤さん、貴女ですね?」 チッチの、物申したくなる程の自白を強要するような誘導に、泡沢はケチをつけたかったが、その前に近藤房江は、池田ミサヨを殺害した事を認めた。 それを見たチッチは椅子に座っている泡沢の股間に手を伸ばした。泡沢の火照ったチンポを摩りながら満足そうに何度も頷いた。 池田ミサヨを殺害した動機はミサヨが金を貸し渋った為、カッとなり殴り殺してしまったそうだ。 凶器のハンマーは捨てずに自宅の箪笥の中に隠し持っていた。 近藤房江はパチンコにはまり多額の借金を抱えていた。何社もの消費者金融に手を出し、その支払いが滞ってしまい、旦那にバレて離婚を迫られていた。 その補填の為に、頼まれてもいないのに、勝手に池田家に乗り込み、寝たきりのミサヨの介護をかって出た。息子の善久は仕事が朝早くから夜も遅い為、帰宅しない事も度々あったという。 そのような生活の為、母親を見れない息子も昼間だけでも話し相手が出来て良かったと思い、口を挟む事はしなかった。 近藤房江は何とか池田ミサヨから現金を引き出させようと手を尽くしたが、ミサヨは金の話になると血相を変え房江を罵った。 近藤房江は、何日も池田家に通っている内にミサヨが隠し持っている現金の在処の予測がついていた。 ミサヨの部屋で会話をしている時、稀に桐箪笥の方に視線が向いた。最初は気がつかなったし、気づいてかもさして気にもしなかった。たまたまだと思っていた。 だが昼間、息子のいない間に、ミサヨの部屋以外家探しをしたが、金目の物はおろか1円だって落ちていなかった。 残るはミサヨの部屋だけだった。その時になって房江はミサヨの視線が度々、桐箪笥に向く事がある事を思い出した。金は桐箪笥の中に隠してあるのは間違いないと房江は思った。 だが幾ら寝たきりとはいえ、目の前で探すわけにはいかなかった。通報され捕まりたくなかったからだ。だがそれだと全くチャンスがなかった。 デイサービスなど行く事を勧めてみたが、あっさりと断られた。 追い詰められた房江は決断する。昨夜、ミサヨを尋ねた後で強盗に襲われた事を装い金を奪おうと考えた。 池田家に入る為の鍵は善久から預かっていた為、問題はなかった。 最悪を想定し、ミサヨを脅す為に池田家にあったハンマーをリビングに隠しておいた。 包丁でも良かったが、ミサヨに罵られてカッとなれば、我を忘れ刺してしまったらいけないと恐れ、ハンマーにしたのだった。 もし最悪な事が起きた場合の心構えも房江にはあった。強盗殺人を装う為に自分自身で頭を殴る覚悟があるつもりだった。 だかミサヨが深夜、ミサヨの部屋に侵入し桐箪笥を漁る房江にミサヨが気づきリモコンで部屋の明かりをつけた時、そんな事は頭から消し飛んだ。 そして桐箪笥を漁る房江を見つけるとミサヨは寝たきりの筈が身体を起こし立ち上がった。 「息子の為に残した金をあんたみたいな奴に取られてたまるか。息子は優しい子だからあんたを信用しているようだけど、私は違う。 最初から金目当てだってのは気づいていたよ。案の定、あんたは私に金の無心をしてきた。ほら来たよ、って私は思ったよ。息子にもその話をしてある。 私の身に何かあったら、犯人はあんただってね」 房江はミサヨの脅しより、起き上がった事に、心底驚き、そして恐れた。 こいつはわざと寝たきりを装っていたに違いない。私がボロを出すとわかった上で、そうなるように仕向けたのだと。 房江は怒りで我を忘れた。気づいたら悲鳴を上げながらミサヨを殴り続けていた。 そして桐箪笥の下、着物の中に6百万もの現金を見つけそれを奪った。消費者金融に全額返済しても、百万近く余る事に房江は気持ちが昂った。 そしてしばらく後に、房江は110番した。 房江はもし午前中に泡沢達が来なければ消費者金融へ支払いに出かける予定でいた。 だが田所が、有名な泡沢という刑事が現場検証に来る、恐らく事件は直ぐ解決しますよと他人事なのに、自分の事のように語る田所に不快感を覚えながらも、その刑事が家に尋ねて来て話を伺うと伝えられては支払いに行きたくても、それが終わるまでは出かけられないと考えてしまっていた。 房江は、とっとと出かけておけば良かったと、声を震わせながらそう言った。 「まだわからない事があります」 泡沢は勃起が治らないようチンポを触り続けるチッチをそのままに房江に尋ねた。 「先ずはキッチンに溜まった食器類の事です」 「はぁ」 「あれは全て貴女が池田家で使用したものですか?」 「ええ、まぁそうですね。あのババア、人が色々してやってるのに、お茶すら出そうとしないから、だから勝手に食べてやったんだ。それくらいしたって罰は当たらないでしょうが」 「当たりますよ」 チッチは泡沢の股間に視線を向けたまま言った。 「せめて綺麗に片付けておくべきでしたね。そうしておけば貴女が逮捕されるまでもっと時間が稼げたかも知れないからです。だが残念な事に罰は当たった」 泡沢がチッチの後に続く。 「パチンコは当たらなかったようですけどね」 チッチがちゃちゃを入れた。 「次は息子さんの事ですが」 「知らないわよ」 「それはあり得ません。ミサヨさんは息子の善久さんに自分の身に何かあったら貴女を疑えと話していたのでしょう?つまり息子さんはミサヨさんのご遺体を見つけて真っ先に貴女の家に伺ったのではないですか?」 近藤房江は唇を噛み締め俯いた。わかりやすいなと泡沢は思った。 「どうせ、床下収納にでも隠してあるんでしょうね」 チッチが顔あげ、真剣な眼差しで近藤房江を睨み凄んで見せた。 「ここに来た時より、若干、先輩のチンポが柔らかくなって来てます。これ以上、焦らしたら先輩の勃起力も弱まり童貞を奪う事が出来なくなるじゃないですか。そうなったら私は房江さん。貴女を許しませんよ。全警察の権力を駆使して貴女を叩き潰しますから」 どういう意味だよ?と泡沢は思ったが、近藤房江は何故かチッチの言葉の暴力に怯えた。 「息子が怒鳴り込んで来た時、幸いな事に主人は出張で、留守にしていました。私は息子を招き入れ宥めました。ですがあの馬鹿息子は私の思いやりを踏み躙り、警察に連絡すると言い出したのでハンマーで殴ってやりました。そこの女刑事さんの言う通りです。死体は床下収納の中にあります。主人が出張から戻るまでにバラバラにしようと考えていましたが、思いの外馬鹿息子が重くて引き上げる事が出来ず、どうしようかと迷っていました。けど、これで死体は引き上げて貰えますよね?床下収納ってかなり便利だから良いんですが、死体のせいで物がしまえなくて困っていたんです」 「スマホは?」 「2人のスマホも、そこに入れています」 「そうですが」 泡沢が、いうと遠くからサイレンの音が聞こえた。警部にメールを入れてからまだ数分しか経っていないが、近くにいた誰かが駆けつけてくれるようだ。だが家の中にいるのに外の音はかなり大きく聞こえるものだなと泡沢は思った。 近藤房江が、連行されるのを見て、泡沢とチッチは車へと戻って行った。後は鑑識さん達の出番だ。自分達の出る幕ではない。警部も戻って来いと言ってくれた。車を走らせながらそれをチッチに伝えると、チッチは 「戻れるわけありません!」 と、大声で怒鳴り泡沢のチンポを取り出した。 「あーやっぱ、萎んで来てるー」 チッチはそんな泡沢のチンポを舐め始めた。 泡沢は慌てて、車を横へ止めた。チッチの頬を両手で挟んだ。顔を上げさせた。チッチの唇から大量のヨダレが垂れていた。 「なぁ。チッチ、俺が池田家の中から叫んだ時、本当に声は聞こえなかったのか?」 「いえ、バリバリ聞こえてましたよ」 「え?ならどうして嘘をついたんだ?」 「だって聞こえたって言ったら、先輩、又、1人で悩むなって思ったからですよ。先輩は勃起刑事です。そこにプライドを持ってください。小細工するみたいに、地味な捜査に頭を悩ますのはジジイになってチンポが勃たなくなってからでも遅くありません。嘘をついた事は謝りますが、でも、私は犯人の偽証やアリバイ工作なんて先輩の勃起の前には歯が立たないと思っていますから。だから勃起だけを信用して欲しくて嘘をつきました。ごめんなさい。お詫びに先輩のチンポをしゃぶらせて……」 「つか。もうしゃぶってんじゃねーか!」 泡沢の叫び声は余裕で車外へと飛び出し付近まで轟いた。 「今回の事件はまさに勃起刑事の面目躍如って感じで、私は嬉しいですよ。木下さんが殉職されてから先輩は塞ぎ込んでいましたから。勿論、表面上では普段通りを装っていましたが、私にはわかります。だってバディだし、何より、自信を持っている時のチンポとそうでない時のチンポの味は全然違いますから。だから私にはわかっていました。けど私は勃起刑事としての先輩を尊敬しています。普通の刑事に成り下がる落ち込んだ先輩なんて見たくないし、大嫌いです。だからあの時、嘘をつきました。田所の小僧にも口裏を合わせるよう命令もしました。憧れの勃起刑事がこのまま終わってしまってもいいのかって。そんな風に言っても一体、先輩の何が終わるのか私は知らないですけど、いえ。違いますね。何が終わるのか私は知っていました」 「俺の何が終わるんだ?勃起刑事で無くなっても刑事には変わりないだろう?」 「先輩が終わるのは……」 チッチは言い両腕を泡沢の首に回し、体に跨って来た。 「今から童貞では無くなるって意味ですよ」 チッチはいい、泡沢の唇に吸い付いた。 泡沢の唇をヨダレ塗れにし、 「幸いな事に私、今日はノーパンですから」 チッチはそう言い泡沢のチンポに優しく触れた。 こんな所を誰かに見つかりでもしたら懲戒解雇も免れない。 泡沢が言うと 「大丈夫です。誰かに見咎められる前に出ちゃいますもん。そうですよね?せ、ん、ぱ、い?」 チッチの言葉に泡沢は返す言葉もなかった。 了
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