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目の前の男性に続いてソファから立ち上がり、そのまま退室しようと扉の方へ足を進める。
見張り代わりに扉の前に立っていた男性は、いつの間にか部屋からいなくなっていた。
「車を回すように連絡してくるから、先に駐車場向かってくれる? 場所は分かるかな?」
「あ、はい。来た道を戻るだけですから大丈夫です。じゃあ、先に行ってますね」
緊張しながら歩いた道だけれど、逃走経路になるかもしれないと思い必死で景色を頭にいれていた。そんなに難しい順路でもないし大丈夫だ。
軽い会釈をしてから扉を開き、部屋から出るための一歩目を踏み出す。その瞬間、部屋から出て直ぐの場所にある台のようなものにぶつかってしまい、次いでそこから落下した陶器の割れる音が盛大に響いた。
「え……?」
まるでスローモーションのように、目の前でゆっくりと地面に叩きつけられたものが、今は破片になって私の足元に散らばっている。
目の前でなにが起こったのかを理解するのに、数秒の時間を要した。
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