幸運

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幸運

 ──と、とんでもない契約をしてしまった翌日は、確かにそう思っていたはずなのに。  あの約束から一ヶ月が経った今、思う。  好きになる予定なんてなかったはずなのに、私はどこで道を間違えてしまったんだろうか。  昌さんの専属になってから、私の生活はガラリと変わった。 「こんなにキスマークだらけで出勤するのよくないよ」という理由で仕事は辞めさせられ、昌さんの所有するマンションに引っ越した私は、まるで同棲のような状態で昌さんと毎日を過ごしている。  監禁とかではなく同棲だ。  性的な行為で借金を返す相手に対して、昌さんは破格の扱いをしてくれていると思う。  元の部屋にあった私の荷物は全部そのまま運んでくれたし、閉じ込められているわけでもない。  昌さんの仕事がない日に二人でデートに出掛けたりもするし、一人で買い物に行ったり、日中カフェでお茶したりするのも自由だ。  そんな触れ合いの中で好意を抱いてしまった私は、やっぱりどこかおかしいのだろうか。  だけど綺麗な顔をした男の人にキスをされたらドキドキするし、細く見えるのに脱ぐとしっかり筋肉がついた身体や、見上げるくらい高い身長も男らしくて、つい好きだなぁと思ってしまう。  ゆったりとした話し方や少し低めの声も一緒にいて落ち着くし、ちょっとした仕草や匂いも好きなのだ。  普段の昌さんとセックス中の昌さんのギャップには未だに慣れなくて、毎回心臓がきゅうっと締め付けられる。触ってくれるのが素直に嬉しいし、激しくされても気持ち良い。
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