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出された書類を受け取り、変なことが書かれていないか順番に文字を追う。
私が破損させたことが確定した場合、その料金を支払う旨の記された誓約書だ。
上から下までしっかりと目を通すが、真っ当なことしか書かれていないように思う。
犯人の特定が出来なくても、私がしたという絶対的な証拠がない場合は請求はしないという事柄も記されている。
これだけしっかりと明記されているのだから、ここでサインをしないと逆に私の方が怪しい。これにサインをするとまずいですと自白しているようなものだ。帰りたいなら書くしかない。
この件に関して本当に私は無関係だし、サインしても問題ないだろう。
手渡されたペンで住所と名前を記し、その横に判を押す。
紙を受け取った男は申し訳なさそうに微笑みながら、「ごめんね、ありがとう」と口にした。
「何もなければ連絡することもしないし、その時はこの誓約書も破棄するよ。とりあえず今日は送っていく」
「あ、ありがとうございます」
きっと連絡がくることはないだろうし、あとはもう帰るだけだ。ようやく気を緩めることができ、緊張感から解放されたばかりで表情も緩む。
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