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アレクシスはそう言うと、エリスの腰に手を回し、華奢な身体を引き寄せた。
驚くエリスを腕に抱き締め、余裕なさげに息を吐く。
「二週間ぶりだ。……君をこうして抱き締めるのは」
「……っ」
「君はどうだったか知らないが、俺は随分我慢したんだ。――戦地で男たちが妻を恋しがる理由を、嫌と言うほど理解した」
悩まし気な声で囁かれ、エリスはカァッと顔を赤くする。
つい先ほどまで真面目な話をしていたせいで、全く心の準備ができていない。
だが、実はエリスもこの二週間、似たような気持ちでいたのは事実だった。
だからエリスは、顔から火を噴きそうな恥ずかしさに耐えながら、必死に伝える。
「あっ……あの、……殿下……」
「何だ?」
「実は、わたくしも……同じ気持ちでおりました」
「……っ」
「シオンの手前……とても言い出すことができず……、でも心では……殿下のことを、いつも恋しく思っておりました」
「――ッ!」
瞬間、今度はアレクシスの顔が赤く染まる。
自分への想いを懸命に伝えようとするエリスの姿に、愛しさが溢れて止まらなくなった。
と同時に鼓動が一気に早まって、下半身が熱を持ち始める。
この二週間、必死の思いで抑えていたエリスに対する欲望が、今にも理性を吹き飛ばしてしまいそうになった。
――ああ、今すぐにでも押し倒してしまいたい、と。
だが、残念ながらここは屋外である。そんなことができようはずもない。
(くそ……、なんで俺は話し合いの場を室内にしなかったんだ……! 部屋の中であれば、今すぐ事に及べたものを……!)
アレクシスは、十数分前の自分の選択を恨みながら、エリスの後頭部に手を回す。
外であっても、口づけくらいならば許されるだろう。どうせ誰も見てやしない。
いや、見られたところで構わないではないか。自分たちは、正真正銘の夫婦なのだから。
――アレクシスはそんな気持ちで、エリスの唇を塞ごうとした――そのときだった。
まるでこのタイミングを見計らったかのように、「姉さん……!」と叫び声がして、二人はハッと顔を向ける。
するとそこにあったのは、息を切らせ、アレクシスを睨むように見据えるシオンの姿だった。
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