6.優しさの理由

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◇  そうして今現在、セドリックの言葉の意味を瞬時に悟ったシオンは、居ても立っても居られずに部屋を飛び出し、暗い庭園を駆け抜けていた。 「姉さん……!」――と、姉の名を恋しく呼びながら、月明りだけを頼りに、エリスの姿を求めてひた走る。  ――今、シオンを駆り立てているのは強い焦燥だった。  セドリックの答えを聞いたシオンは、どうしてもエリスに確かめなければならないと思った。 『この二週間、姉さんがずっと一緒にいてくれたのは、僕に負い目を感じていたからなのか?』――と。  自分を泊めるようアレクシスに頼んてくれたことも、毎日お茶を振る舞ってくれたことも、エリスとアレクシスが二人きりにならないよう邪魔をする自分を、決して(とが)めなかったのも……。 (すべては、幼い(ぼく)を守れなかったことに対する、罪悪感のせいだった……?)  そんなはずないと思いたいのに、一度考えだすと止まらなくなる。  愛故と思っていたエリスの行動が、実際は負い目からくるものだとしたら、自分はなんと愚かなことをしてしまったのだろう、と。
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