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◇
そうして今現在、セドリックの言葉の意味を瞬時に悟ったシオンは、居ても立っても居られずに部屋を飛び出し、暗い庭園を駆け抜けていた。
「姉さん……!」――と、姉の名を恋しく呼びながら、月明りだけを頼りに、エリスの姿を求めてひた走る。
――今、シオンを駆り立てているのは強い焦燥だった。
セドリックの答えを聞いたシオンは、どうしてもエリスに確かめなければならないと思った。
『この二週間、姉さんがずっと一緒にいてくれたのは、僕に負い目を感じていたからなのか?』――と。
自分を泊めるようアレクシスに頼んてくれたことも、毎日お茶を振る舞ってくれたことも、エリスとアレクシスが二人きりにならないよう邪魔をする自分を、決して咎めなかったのも……。
(すべては、幼い弟を守れなかったことに対する、罪悪感のせいだった……?)
そんなはずないと思いたいのに、一度考えだすと止まらなくなる。
愛故と思っていたエリスの行動が、実際は負い目からくるものだとしたら、自分はなんと愚かなことをしてしまったのだろう、と。
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