6.優しさの理由

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「姉さん……! どこにいるの……!?」  シオンは、昼間のエリスの青ざめた顔を思い出し、強い後悔に苛まれた。 『姉さんと一緒に暮らせないなら、生きる意味なんてない……!』――そう叫んで手すりに足をかけた自分の腰に縋り付き、必死に止めてくれたエリス。  あのときエリスは、いったいどんな気持ちでいたのだろう。  実際の気持ちは、本人に聞いてみなければわからない。  けれど少なくとも、いい気持ちはしなかったはずだ。  それどころか、エリスは自身を責めたかもしれない。    自分の配慮が足りなかったから、(シオン)を追い詰めてしまったのでは。  もっと大切にしてあげていれば、(シオン)がこんな行動に出ることはなかったのに――そう思った可能性だってある。 (姉さんに、謝らないと……!) 『心配をかけてごめんなさい』と、伝えなければ。  そして、一刻も早く姉を安心させてあげなければ。  すると、そう思った瞬間だった。  暗がりの向こうに見覚えのある二人分の人影(シルエット)を見つけ、シオンは声を張り上げる。 「姉さん……!」――と。  けれど、彼はすぐに後悔した。  なぜなら、間の悪いことに、二人はたった今口づけを交わそうとしていた、その瞬間だったのだから。
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