7.シオンの選択

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(結局僕は、姉さんの弟以上にはなり得なかった)  罪悪感云々を抜きにしても、エリスにとって自分は『頼れる相手』ではなく、あくまで『守り、庇護する対象』でしかない。  それはシオンがこの二週間、嫌と言うほど思い知らされた現実でもある。 (だったらもう、僕ができることは一つしかないじゃないか)  このままここに居ても、自分の望みは叶わない。どころか、エリスの負担になるばかりだと言うのなら、ここから出ていく以外にない。  シオンは、この一連の内容をトータル二秒で思考し終えると、平静を装うように、顔に笑みを張り付けた。  エリスの「セドリック様とのお話は終わったのね?」という問いに答えるべく、唇を開く。 「うん、終わったよ。だけど僕、この話は断ろうと思ってここに来たんだ」 「――!」 「やっぱり、名ばかりの『小姓』っていうのは良くないと思うし、昼間の自分の行動も、僕なりに反省してるから。少し自分を見つめ直す時間がほしいなと思って。つまり……僕、これから荷物をまとめて出ていくから、その挨拶に」 「……っ」  刹那、エリスは困惑気に眉を寄せた。だがそれも無理からぬこと。  シオンは昼間、エリスと暮らしたいがために、二階から飛び降りようしたのだから。 「でもシオン、あなた……昼間はあんなに……」 「そうだね。昼間は確かにああ言ったけど、あのときは冷静じゃなかったんだ。……ごめんね、姉さん、心配かけて。でも、ここを出ていったからって、今後ずっと会えないわけじゃないし。授業が休みの日は、会いにくるから」 「――っ」  シオンは、驚きのあまり放心したエリスに、ニコリと笑みを投げかける。 『僕はもう大丈夫』、そう伝わるよう祈りながら。
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