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(結局僕は、姉さんの弟以上にはなり得なかった)
罪悪感云々を抜きにしても、エリスにとって自分は『頼れる相手』ではなく、あくまで『守り、庇護する対象』でしかない。
それはシオンがこの二週間、嫌と言うほど思い知らされた現実でもある。
(だったらもう、僕ができることは一つしかないじゃないか)
このままここに居ても、自分の望みは叶わない。どころか、エリスの負担になるばかりだと言うのなら、ここから出ていく以外にない。
シオンは、この一連の内容をトータル二秒で思考し終えると、平静を装うように、顔に笑みを張り付けた。
エリスの「セドリック様とのお話は終わったのね?」という問いに答えるべく、唇を開く。
「うん、終わったよ。だけど僕、この話は断ろうと思ってここに来たんだ」
「――!」
「やっぱり、名ばかりの『小姓』っていうのは良くないと思うし、昼間の自分の行動も、僕なりに反省してるから。少し自分を見つめ直す時間がほしいなと思って。つまり……僕、これから荷物をまとめて出ていくから、その挨拶に」
「……っ」
刹那、エリスは困惑気に眉を寄せた。だがそれも無理からぬこと。
シオンは昼間、エリスと暮らしたいがために、二階から飛び降りようしたのだから。
「でもシオン、あなた……昼間はあんなに……」
「そうだね。昼間は確かにああ言ったけど、あのときは冷静じゃなかったんだ。……ごめんね、姉さん、心配かけて。でも、ここを出ていったからって、今後ずっと会えないわけじゃないし。授業が休みの日は、会いにくるから」
「――っ」
シオンは、驚きのあまり放心したエリスに、ニコリと笑みを投げかける。
『僕はもう大丈夫』、そう伝わるよう祈りながら。
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