帰還者コージ

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えぇっと......じゃあ、こうしてみようか。 「浅野さん、俺から質問しますから、それに答えてください」 「あっ、はい」「毎夜、飼い猫が夢に出て話しかけてくると?」 「はい、もう十日くらいは前からずっと」 「なにを言ってくるんです?」 「旅行に行かないで、絶対に行かないで、と、繰り返してきます」 「旅行は、じっさいに行くんですか?」 「はい、明後日の日曜に日帰りで行きます」 「そんな夢をみるなら、やめようとはおもわないんですか?」 「どうしても行きたいんです」 「なるほど。で、なんでそれで俺のところに来たんですか?」 「夢で言われたんです。大久保の落合という探偵さんに会いたいと」 「はあっ!?」 唐突に自分が登場したので、手に持っていたコーヒーカップを落としかけた。 「落合さんに会わせてくれるなら、旅行に行ってもいいと、 ポロロが、そう言ってきたんです。 半信半疑でネット検索してみたら、大久保に本当に、落合探偵事務所が、 あったから、これはもう行くしかないなと。 急に連絡したのに、こんな遅い時間でも対応してくださって、 ありがとうございます」 順序を立ててキッチリと聞いたら、さらにわけがわからなくなった。 もちろん、俺と浅野さんは間違いなく初対面だ。 とにかく来て欲しいと言われたので、行くことにした。依頼料を払って くれるのだから、これは仕事として成立するのだ。 今日、浅野さんは仕事帰りにここに来たので、時間は20時を過ぎている。 明日は土曜日で浅井さんには休日だし、明日の午後に改めて自宅に 伺うということになった。 1月半ばで寒さが深まる時期に聞かされた、猫との奇怪な夢......。 ホラー展開にはならないでほしいと、俺は心のほうが震えた。
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