メリーちゃん

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メリーちゃん

 夏になるとよく怪談話が聞こえてくる。  今の若い人はもう知らないかもしれないけれど、私の若い頃には良く話された話。そうですね。まだ家の電話があった頃のお話。 ♪リーンリーン 「はい。もしもし。」  可愛らしい女の子の声で、 『私、メリーちゃん。今から行くわね。今○○橋にいるの。』 「あぁ、まさかメリーってあの、怖い話の?」  ・・・プー・・・プー 「切れた。」 ♪リーンリーン 「はい。もしもし。」 『私、メリーちゃん。今交番にいるの。』 「やっぱり、あのメリーちゃん。近づいている。」 ♪リーンリーン 「はい・・・もしもし。」 『私、メリーちゃん。今コンビニにいるの。』 「うわぁ、どんどん近づいている。」 ♪リーンリーン 「はい。もしもし。」 『私、メリーちゃん。お家が見えたわにいるの。』 「うわぁ、どうしよう~~。」 ♪リーンリーン 「はい。もしもし。」 『私、メリーちゃん。今玄関の前にいるの』 「ぎゃ~~~!」 ♪リーンリーン 「はい。もしもし。」 『私、メリーちゃん。ただいま』 「うわぁ、うわぁ・・」 ♪リーンリーン 「はい。もしもし。」 『私、メリー。ただいまってば、鍵忘れちゃったんだから早く開けてよ。』 「ごめんなさい。ごめんなさい。」 ガチャッ 「ただいま~。」 「ごめんなさい。メリー、言われた掃除、まだしていないんだ。本当にごめんなさい。」 「なんですって?わざわざ演出してゆっくり帰ってきたのに。  いちいち電話で場所の報告もしたのに。  鍵がないから一応交番に落とし物届出して。  どうせ夕飯はないだろうからコンビニに寄って。  30分は時間かけたんだからお掃除くらいしておいてよ。」  メリーちゃんはとても怒って、とても怖かったというお話。  あ、すみません。本当は怖いメリーちゃんが家の前まで来るという話を、語り手が臨場感をもって話して終わるお話なんです。 【了】
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