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空を見上げたまま、マリエルが手に持った長い杖を数回地面に打ちつけた。竜の鱗を模した青い飾りが揺れて、しゃらん、と透き通った音が響く。
祈りを込めるようにマリエルが杖を高く掲げると、杖自体が青く輝き始めた。青く光る杖を持ちながら、マリエルはくるくると舞い踊る。それは、竜を呼ぶための特別な舞。
マリエルの動きに反応するように杖は輝きを増し、その光はまっすぐに空の上へと向かっていった。
光の行方を追うように顔を上げると、真っ青な空にやがて小さな黒い点が見えた。
爪の先ほどの大きさだったそれは、みるみるうちに大きくなり、竜の姿となる。大きく翼を広げた黒い影を見上げて、シェイラは圧倒されるように口を開いた。
本で読んだり話を聞いたことはあっても、実際に竜を目にするのは初めてだ。シェイラの身体より数倍大きくて、全身は硬そうな鱗で覆われている。陽の光に反射したのか青い鱗が一瞬きらめいて、その美しさにシェイラは目を奪われた。
大きく強く、何より美しい。
あの竜に喰われるのなら悪くないと思いながら、シェイラはまっすぐに竜を見つめる。
くわっと開いた口の中には、鋭利な歯が並んでいる。痛いのは嫌だから丸呑みだといいなと思いながら、シェイラは祈るように握った手に力を込めた。
強く目を閉じたせいか、目蓋の裏に今までの出来事が次々と浮かんでは消える。走馬灯というやつだろうかと思いながら、シェイラは短い人生を振り返った。
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