はじめての朝

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「ねぇ、シェイラ。まだ外には出ていないんでしょう? あたしとお出かけしましょうよ。色々と案内するわよ」 「えっと……」  どうすればいいかと返事に迷ってイーヴを見上げると、優しい笑みが降ってきた。 「行きたいなら、行っておいで。だけど、まだ外に出るのが不安なら、無理はしなくていい」  自分で決めていいのだというようなその言葉に、シェイラは首をかしげて考え込む。少し圧の強めなルベリアに戸惑う気持ちはあるけれど、自由に外出なんて今までしたことがなかったから、行ってみたい気持ちはある。  しばらく考えたあと、シェイラはおずおずとルベリアを見上げた。 「あの、連れて行ってくださいますか? ルベリアさん」 「ルベリアでいいわよ。もちろんだわ、お出かけしましょうね、シェイラ」  嬉しそうに笑ったルベリアは、優しくシェイラの頭を撫でてくれた。  イーヴから、シェイラに用意した服が大きすぎるという話も聞き出したルベリアは、それならと彼女が懇意にしている仕立屋も外出の行き先に加えてくれた。 「本当に華奢ねぇ、シェイラ。あたし馬鹿力だから、気をつけないと怪我させちゃいそうだわ」  シェイラの手首に指をまわして、細いと驚きながらルベリアが苦笑する。  見るからに高級な店に連れて行かれてシェイラは内心慄いていたのだけど、金に糸目はつけなくていいとイーヴから言われているとルベリアは次々とドレスをオーダーしていく。  背も高くて派手な顔立ちのルベリアに最初は少し気後れしていたシェイラも、何かと話しかけてくれる彼女の明るさにあっという間に打ち解けた。  ラグノリアでの生活を聞いたルベリアは、やはりイーヴたちと同じように顔をしかめたあと、優しく抱き寄せてくれた。 「竜族がラグノリアから花嫁を迎える慣習自体を、考え直すべきかもしれないわね」 「でも、竜族の守りがないとラグノリアは崩壊してしまいます。そのために私はここに来たんですから」  困ったように眉を下げたシェイラの頭を撫でて、ルベリアは笑みを浮かべる。 「それについては問題ないわ。竜族は、一度交わした約束を違えることは決してしないから。そうね、あたしからも長に進言してみるわ。シェイラみたいな子を、これ以上増やしたくないもの」  シェイラをぎゅうっと更に強く抱きしめて、ルベリアは力強くうなずいた。彼女は黒竜の一族の末娘で、当主である祖父が今はドレージアの長を務めているらしい。  自分のことはともかく、生贄として育てられる子供がいなくなることは望ましいとシェイラも思う。生贄や花嫁といった慣習がなくても竜族がラグノリアを守ってくれるのなら、それが一番だ。 「ラグノリアを守ることが最優先ですけど、もしもこの慣習がなくなるなら……、嬉しいです」   シェイラのつぶやきに、ルベリアは笑ってうなずいてくれた。
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