竜族の国、ドレージア

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「身の回りのことはエルフェに、その他困ったことがあればレジスに言えばいい。ここを新しい我が家だと思って、過ごしてくれ」  イーヴがそう言ってシェイラの頭をぽんと撫でると、部屋に戻ると言い残して立ち去ってしまった。  レジスが咎めるような声で一度呼び止めたものの、イーヴはあとは任せたというように軽く手を挙げていなくなってしまう。 「申し訳ありません、シェイラ様。旦那様は少し不器用で見た目も怖いですが、悪い人ではないのですよ」  とりなすようなレジスの言葉に、シェイラは平気だと小さくつぶやいて首を振った。確かに見た目は少し怖いけれど、彼はシェイラの目を見て話をしてくれた。そんな風に接してくれたのは、今まではマリエルだけだった。  レジスもエルフェも、シェイラを優しく見つめてくれて、それだけで何だか泣き出しそうなほどに嬉しくなる。   「では、お部屋にご案内しますね」  エルフェが笑顔で手を引く。うなずいて連れて行かれた先は、屋敷の二階にある部屋だった。ラグノリアでシェイラの部屋として与えられていたものとは全く違う広く綺麗な部屋に、思わずしり込みするように足を止めてしまう。 「シェイラ様?」  中に入ろうとしないシェイラを見て、エルフェが戸惑ったように首をかしげる。 「ごめんなさい、あの……あまりに広くて立派なお部屋だったから」 「そりゃもう。ラグノリアからの花嫁様をお迎えするのに、張り切って準備したんですよ。調度品なんかは、ひとまずこちらで選ばせてもらいましたが、もし何かお好みがあれば教えてくださいね。すぐに取り寄せますから」  エルフェが、得意げな表情で胸を張る。青と金色が印象的に使われた部屋は、ラグノリアと雰囲気こそ違えど美しい。まるでイーヴの髪と瞳の色をあらわしているようだなと、シェイラは部屋の中をぼんやりと見渡した。 「ひとまずお着替えをしましょうか」  エルフェの言葉に、シェイラは自らの服を見下ろす。聖女の衣装によく似た白い服は、今までシェイラが身につけたものの中で一番上等なものだ。  だけどこの豪華な部屋の中では、それすらもみすぼらしく思えてくる。服につけられた装飾品だってがちゃがちゃと重たいばかりで、安っぽく見える。  そんなシェイラの心のうちなどエルフェが知るはずもなく、彼女は鼻歌混じりにシェイラを部屋の中へと促す。鮮やかな刺繍の施されたソファに座ると、驚くほどに柔らかな座面がシェイラの身体を包み込むように受け止めた。
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