私の憧れ

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5時45分 定時から30分が過ぎた。 自分の仕事も一段落した。 「どうしようかなあ〜」と悩んでいると、 「え、お前もう仕事終わったんだろ? まだ居んのかよ」と斜め後ろの席の山田にツッコまれる。 慌てて違う仕事を机の上に広げる。 「仕事は、いくらでもあるもん」 「とか言って田上さんを待ってんだろ?」 どうして分かったんだ? あ、そりゃあそうか…… 「だってこの書類出来たから渡さないと」 「机の上に置いとけば?」 「間違いがあったら大変だから手渡さないと!」 「ふ〜ん」と山田は、笑っている。 「何よ!」 「イヤ別に……お前全部顔に出てるから面白れ〜」 「そ、そんなこと……」 何を言われようと私が田上さんを思う気持ちは、変わらない。 すると……コツコツと靴音をたてて、田上さんが帰って来た。今日は、作業着じゃなくスーツに革靴のままだ。カッコイイ〜思わずニッコリ。 「ごめん! ひまり! 出来た?」 「お帰りなさい。はい、出来てますよ! チェックお願いします」 「おお〜サンキュー」 山田の顔がニヤニヤしているのが見えたが、 今は、それどころではないので構わない。
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