せいすい

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せいすい

 私の家には、自販機がありません。  おそらく、どこのお宅でもそうだと思います。  電気代はバカにならないし、その他の維持費だって相当な額になるでしょう。  でも、もし家にあったら便利なんじゃないでしょうか……?  とも、思いませんよね。  飲み物を手に取るごとにお金を取られるくらいだったら、冷蔵庫を置いたほうがマシですよね。  やっぱり、外出先に置いてある、ということが便利さの秘訣なのかもしれませんね。  そんな自販機。  ネットを漁ってみたら、古代のエジプトが起源のようです。  コインを入れると、その重みで水が出てきて飲むことができるという仕組みだったそうで、その名も「聖水自販機」。  どうやら、一部の高官や権力者など、使える人は限られていたようです。  「聖水」といえば、私は「ドラゴンクエスト」を思い出します。  「ホイミ」「メラ」などの呪文を唱えるのに必要なMP(マジックポイント)を30ポイント程度回復してくれる、貴重なアイテムです。(細かい値は、シリーズによって異なりますが)  それが自動販売機から出てきたら……と想像すると、なんだか頭が混乱してきます。  まず、ドラクエの世界には自販機なんてありません。  お金を払う対象は、武具や防具を売ってくれる商人と決まっています。  ということは、お金を払って聖水を得るという行為は、道具屋で売っている聖水を買う、と置き換えることができます。  なんだ、フツーじゃないか。  と思ったそこのアナタ!  聖水は、基本的に道具屋では売られていないのです。  ダンジョン探索中に宝箱を開けたり、モンスターを倒した時に落としていったのを拾うなどしなければ、手に入らないのです。  ダンジョンの奥でパーティの残りHP、MPと睨めっこをしながら強いモンスターを倒し、時には葬送のフリーレンでお馴染みのミミックに出くわして全滅しかけたりする最中で、ようやく手に入るシロモノなのです。  お金を出すだけで聖水が手に入るということが、いかにリッチなことか、ご理解いただけたでしょうか?  そんな贅沢な発明品だった自販機。  駅のホーム、街中の公園なんかに置かれていなければ、おそらく私は管理者に対してクレームをつけるでしょう。  それくらい、現代では当たり前に普及し、誰もが気軽に利用できます。  おエライさんにしか扱えなかった時代と比べれば、すっかりその価値は下がったと言えるでしょう。  ここでまた、ドラクエの話に戻らせてください。  実はドラクエにおいて、聖水がダンジョンで当たり前に手に入るようになる頃には、すでにパーティはラスボスを倒せるくらいのレベルに達していて、聖水など使わなくてもMPに不自由しなくなっていることが多いんです!  MP回復、という貴重な効果を発揮するにもかかわらず、いざ使おうと思った時には「なんだ、大したことないじゃないか」と呆れられ、時にはコントローラーを投げつけたくなるのです。  私がプレイしていた限りでは、残念ながらそういう一面も持ち合わせていたように思います。  なんだか、当たり前に普及した自販機の飲み物と、似ているような気がしてならないのは、私だけでしょうか?  もうちょっと、当たり前に存在するものの価値について、考えてみてはいかがでしょうか?  その末にはきっと、家に自販機を置きたくなることでしょう……。  と言いたいところですが、そうなるわけないですよね。莫大なお金がかかるわけですし。  ですから最後に、今回のエッセイについて総括する一文を添えて、終わりにしたいと思います。  なんだ、大したことないじゃないか!
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