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1双子
聖良と沙良は高校生になり、お互いを意識しないような生活を送っていた。
聖良はいわゆる陽キャで学級委員のようなものに務めている。
沙良は比較的落ち着いていて常に冷静。図書委員長を務める優秀な生徒。
聖良も沙良も親の前では仲が良かったが、実は裏ではバチバチな関係を築いてきた。どちらかというと、聖良が’一方的にそのような関係を作ったと言っても間違いない。
でも否定的過ぎることは言わなかった。もし仮にでも言ってしまったら親の前だけでも仲良くはできなそうだったから。
そんなある日、事件が起きる。
学校であった定期テストの結果が返ってきた。聖良はトップ10入りは果たしたが9位というギリギリな結果になってしまった。一方、沙良は2位。1位は惜しくも届かなかったが十分いい結果になった。そのせいで聖良は親からあまり褒められなかった。母さんも父さんも「沙良、沙良。2位、すごいね」としか言わなかった。9位だってもちろんすごい。けれど上には上がいたらそっちを褒めるに決まっている。そんな当たり前の事実が聖良の心には重く突き刺さった。
その日の夜、聖良は沙良に突然
告げる。
「あんたとあーしは違う」
唐突すぎて沙良は一度動きを止めた。
「急にどうしたの」
いつものように落ち着いた声色で言う。それが聖良の神経を逆撫でさせた。
もちろん、聖良は八つ当たりだと分かっていた。
「あんたはなんでいつもいつも、あーしの上を歩くの?いつも僅差で負けるのは何?あーしは学級委員も務めているのに、クラスからも認められているのに、成績でいつもギリギリあんたに負けるのは何?」
聖良は言いたいことははっきり言ってしまうタイプだ。それ故に、言い過ぎてしまうこともある。
「あんたはきっとあーしの妹なんか
じゃない」
「…え」
ずっと黙って聞いていたが、唐突すぎる言葉に思わず反応してしまった。
「姉ちゃん、それは…、」
「なに?」
「言い過ぎじゃ、ない?」
静かに宥めるように沙良は伝えた。
けれど冷静になっていない聖良にはその余裕のある言い方がムカついて仕方がなかった。
「もう、あんたの姉ちゃんなんかじゃない。放っておいて!」
聖良も心のなかでは分かっていた。
気分を晴らすために妹をサンドバッグにしていることなどわかっていた。
それよりも悔しさが勝ってしまった。おそらく勉強した努力は二人共互角だった。お互い教え合うこともあったしテストに関しては協力していたのに、自分より上を取った沙良が許せなかったのだ。
「あ…姉ちゃ…」
沙良が言い終わる前に聖良はもう部屋から出ていった。
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