指先から指先へ

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「…ん」 「お、ありがとう」  ヤナギの指先から私の指先に移動する点数シール。 「毎回集めてる割には一度も当たんねぇな」 「そりゃ競争率バカ高いからね」  バッグの中から応募用のシートを出して点数シールを貼る。 「もっと当たりやすい方に応募しろよ」  そう言ってヤナギが私の手からシートを取り上げる。 「いつも当たりやすいお菓子の詰め合わせの方に応募してるっつーの」 「それなのに当たんねぇのかよ?」  点数シールの付いていたパンを(かじ)りながらヤナギが笑う。  春と秋の年2回、私はとあるメーカーのパンに付いてくる点数シールを集めては応募を繰り返している。 『ねぇ、柳澤くん。そのシール、いらないならちょうだい』  入学から間もない高1の4月13日。  始めてヤナギと会話をした。 『あぁ、良いよ』  ヤナギの指先から私の指先に移動した点数シール。 …あの日から、2年半が過ぎた。  何度も何度も移動してきた点数シール。  いつからだっけな。  触れた指先に胸がざわつく様になったのは…。 「当たったら1割よこせよな」 「もちろん」 「絶対(ぜってー)だからな」 「分かってるよ。ヤナギ、私よりもパン食べてくれてるもんね」 「卒業した後も、ずっとだからな」 「……うん。約束ね」 END
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