白鬼はアオネコとともに

第1話：虐め社会の行く末は

「ん？　何々？ 僕の顔に何かついてる？」

「いや、君だれ？ というかなんでここにいるの？」

その言葉に、青年はハッとした様子で仰々しく頭を下げ再び笑みを浮かべると、スミレの足元に視線を送る。

「これは失礼。僕はそこのアオネコちゃんを迎えに来たんだ。ほら、アオネコちゃん？ちゃんと挨拶して」

「にゃぁ」

突如響いた猫の鳴き声にスミレが一歩身を退くと、足元には凛とした姿勢で彼女を見つめる蒼毛で蒼い瞳を持つ猫がこちらを見つめており、再度小さく鳴くとゆっくりと青年の元へ歩いていく。

青年が蒼い猫をそっと肩に乗せるのだが、そこでスミレの視線が自分に向いていることを感じ、場の空気を再開させるかの如く一度手を打った。

「さて。アオネコちゃんも戻ってきたし、僕の目的はこれで終わりだ。
あ、邪魔してすまなかったね。ささ、どうぞ死んでください。僕も自死を望む弱者なんて興味ないからね」

「わ、私だって死にたいわけじゃない。い、生きたいんだ。でも、もうどうすればいいかがわからない。
これが私の運命なの…… どこで狂ったのかもわからない。
どうすればいいの……」

スミレはフェンスをがっしり握りしめ、しゃがみ込むと何度も何度もフェンスに頭をぶつけ涙を流す。

どんなに虐められても、孤立しても一度も涙を見せなかったスミレだったが、ここでその限界が来たのか、大粒の涙が止まることを知らず流れ続ける。

「僕なら、その運命。変えてあげられるよ？ 君の美しさが本物ならね」

突如響いたその声にスミレが顔をあげると、青年がニヤニヤとこちらを見つめていた。