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「子供の失踪?」
「三人の子供が失踪しました。未解決事件です。いずれ小川さんの耳にも入ったでしょうからお伝えしておきます」
どうしてこのタイミングなのか。春奈は頷くように唾を呑み込んだ。
「そしてここからは噂です。失踪した子供の友達が刑事さんに話した、たった一人が口にした噂です」
御手洗は春奈の目を見て、何度も噂だと念押しした。
「団地の中に、おはじきが落ちているのだそうです。それを集めて持っていくと、お菓子をくれるお婆さんがいる。と」
春奈は小さな悲鳴をあげ口に手を当てた。
「御手洗さん、それって!」
「十五年ほど前の噂ですよ。警察だって一応調べはしたでしょう。それで噂なんですから。ただ大輝くんの様子が気になったので、一応お話ししておこうかと。当時の自治会長しか知り得ませんし、それ以来聞くこともなかった噂ですから」
「そんな事が。今知れて良かったです。違う形で知ったら、きっと落ち着いていられませんでした。ありがとうございます」
もしも十五年前の噂が犯人の意図した事だとしても、今も機能しているとは思えなかった。しかし類似性があるのも無視できなかった。おはじきが貰ったものではなく、大輝が集めた物だとしたら。それをお菓子と交換する人物がいるのだとすれば。いったい誰が何のために。御手洗も心の何処かでそう思ったに違いない。だからこそ、自分に話してくれたんだと春奈は複雑な思いのまま御手洗宅を後にした。
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