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大輝は自分の家とは別の棟の敷地に入っていくと、低い生垣で囲まれた小さな広場の中で足を止めた。かつては沢山の子供が遊んでいただろう砂場は雑草交じりでかたそうだった。古びた街灯に、隅に木製のベンチがひとつ。それと今では使う人はいないだろう電話ボックスがあるだけで、夜は暗く人気がなさそうだと春奈は感じた。
木製ベンチの後ろにある、茂みの下を大輝は覗き込んでいた。そして四つん這いになり突っ込んだ手は、何かを握りしめていた。
「だいちゃん」
不意に声がして春奈は身を隠すように体を傾けた。そっと覗くと見知らぬ女の子が大輝に話しかけていた。
「見つかった?」
「うん」
大輝が握りしめていた物を女の子の掌に置いた。そこにポケットから取り出した物も置いた。それは色とりどりのおはじきだった。
「本当にもらっていいの?」
「お菓子いらないから」
「ありがとう。これで平和になるね」
知り合って間もない感じだったが、春奈には二人とおはじきの関係性がはっきりと分かった。やはり見つけたおはじきとお菓子を交換する人物がいるのだ。そうして呼び寄せた子供を攫う人物が。
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