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刻一刻とその時間が迫ってくる。
こんなにも誰かと離れるのが寂しかったことなんて今まであったかな。
誰かとこんなにも深入りする仲になるなんて、二週間前の俺が想像しただろうか。
あの日、俺は運命の出会いをした。
こうして目の前にいるこの人との別れがこんなにも切なくなるほどの初めての恋をした。
俺は飛べないペンギンに恋をした。同性であるオスのペンギンに本気で恋をした。
飛べないペンギンは、俺をペンギンと間違えて泳げない魚の俺を捕まえた。
ペンギンはツガイで一生死ぬまで添い遂げるって言うけれど、俺は泳げるペンギンなんかじゃなかった。俺は哀れな泳げない魚だった。だから勘違いなんかしない。
俺たちの恋はもう、ここまでだ。
もう期限ぎれだ。
彼のお陰で、あんなに大好きだったはずの叶わぬ恋をしてた杉ちゃんの事なんか、すっかり忘れてここんところすごしてる俺がいた。
また、他に誰かいい人探せばいい。今度こそ、誰かと本気の恋をしてみようかな。やっとそんな風に思えた。
今なら出来るかもしれない。誰かとの本気の恋。残念ながら、今俺の目の前にいるこの人を、愛おしいと気づくのが遅かった。手遅れだけど、確かに俺は間違いなくこの人に恋をしていた。
俺にとって彼との時間がこんなにも大切な時間だったなんて知らなかった。
でも全然、後悔なんかしてない。
俺もそろそろ、本気の恋をしてみてもいいのかなってようやく今、初めてそう思えたから。だから今日までのことはいい思い出として…。
今日は笑顔で彼を送り出す。
だから、絶対に泣かないんだ。
そうやって何度も自分になんとか言い聞かせる。込み上げてくるものをなんとか呑み込み堪えてるせいで、声を出したらいまにも裏返ってしまいそうだ。込み上げてくる涙を必死に堪える。
新幹線乗り場のホームまでやって来た。
涙なんか見せたくなかった。悲しい別れなんて柄じゃねぇ。だって、俺はビッチで屑なチャラいやつだから。
ちゃんと最後まで笑って見送ってやる。
ビッチで屑な俺がエリートな彼と夢のような二週間を過ごし。夢のようなデートをして最後の最高の夜を過ごした。
別れたくないなんて今さらすがったりしない。そんな野暮なことは言わない。だって俺たちただのキスフレだし。俺たちそもそもペンギンと魚じゃ、住む世界が違いすぎた。
こんなの期限付きのただのキスフレだ…。
強がる俺に別れ際、彼のふわりとした優しい目が見つめてくる。
やめてくれよ、そんな顔で見られたら、別れたくなくなる…。
俺、やっぱり、離れたく…、ないみたいだ…。
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